第1話「桜舞う入学式」
桜が舞う神楽坂学園。
黒川鈴は、新しい制服に袖を通し、校門の前に立っていた。
肩まで伸びた黒髪が春風に揺れ、制服のスカートをかすかに揺らす。
春風に乗って舞う桜の花びら。
真新しい制服に身を包んだ新入生たちの笑い声。
今日から、私の高校生活が始まる。
ようやく、この日が来た。
あの日、胸に残った一つの想い。
「もう一度、あのギターの音を聴きたい。」
その想いだけを胸に、私はここまで来た。
「やっと会える。あのギターの音に」
そう呟いた自分に、少しだけ笑ってしまう。
まだ会えると決まったわけじゃない。
あの日の少年が、この学校にいる保証もない。
それでも、不思議と胸は高鳴っていた。
春風が頬を撫でる。
私は小さく息を吸い込み、校門を見上げた。
「すー! おはようさん!」
突然、後ろから大きな声が響いた。
その声に、浮かれていた気持ちが現実へ引き戻される。
「悠……うるさい。もう高校生なんだから、少しは落ち着きなよ」
振り返ると、そこには見慣れた顔があった。
少し明るい茶色の髪を無造作に揺らし、人懐っこい笑顔を浮かべた少年。
藤原悠。
保育園の頃からずっと一緒にいる幼なじみ。
家も近く、何かあるたびに隣にいた存在。
今年の春からは、また同じ学校に通うことになった。
悠が鈴の横に並ぶ。
「それにしても、すーとまた同じ学校ってなんか変な感じするなぁ」
「保育園からずっと一緒じゃん」
「いや、高校まで一緒になるとは思わんやん?」
悠はいつものように笑う。
笑うたびにくしゃっと細くなる目は、小さい頃から変わらない。
でも鈴は少しだけ周りを見る。
神楽坂学園。
ここに来た理由は、兄の蓮がいるから。
……だけじゃない。
そして校門前。入学式が終わり、生徒たちが次々と校門を出ていく。
鈴は悠と一緒に蓮を待っていた。
「お兄ちゃん、遅いね」
「蓮にぃ、バスケ部の先生に捕まってるんちゃう?」
そんな話をしていると――
「鈴」
聞き慣れた声。
振り返ると、高い身長の男子生徒がこちらへ歩いてきた。
黒髪を短く整えた兄は、制服姿でもどこか頼もしさがあった。
「お兄ちゃん」
久しぶりに見る制服姿の兄。
鈴にとって、兄はいつも自分を守ってくれる存在。
でも蓮は少し心配そうに私を見る。
「無理するなよ」
「高校生活始まったばっかなんだから」
「蓮にぃ!」
校門の前で待っていた蓮の姿を見つけると、悠は嬉しそうに駆け寄った。
「また一緒にバスケできるやん!めちゃ嬉しい!」
そう言って、勢いのまま蓮の背中に飛びつく。
「おい!悠!危ねぇーよ!」
蓮はよろけながらも、どこか呆れたように笑った。
「高校生になってまでそのテンションかよ」
「ええやん。蓮にぃは蓮にぃやろ?」
昔から変わらない距離感。
鈴はそんな二人を見て、少しだけ笑った。
蓮と悠。
自分が知らないところでも、兄を支えてくれていた大切な人。
新しい学校生活への不安が、ほんの少しだけ軽くなった気がした。
「で、なんで遅かったの?」
私は二人の話を遮るように聞いた。
「先生に捕まってさ。片付けまで手伝わされてた。」
「ははっ!蓮にぃらしいわ!」
悠が笑うと、蓮は「別に大したことじゃねぇよ」と肩をすくめた。
「じゃ、行くか。暁寮まで案内する。」
その一言で、止まっていた時間が動き出した。
この時の私は、あの場所でたくさんの出会いと別れが待っているなんて、まだ知らなかった。
桜が舞う神楽坂学園。
黒川鈴は、新しい制服に袖を通し、校門の前に立っていた。
肩まで伸びた黒髪が春風に揺れ、制服のスカートをかすかに揺らす。
春風に乗って舞う桜の花びら。
真新しい制服に身を包んだ新入生たちの笑い声。
今日から、私の高校生活が始まる。
ようやく、この日が来た。
あの日、胸に残った一つの想い。
「もう一度、あのギターの音を聴きたい。」
その想いだけを胸に、私はここまで来た。
「やっと会える。あのギターの音に」
そう呟いた自分に、少しだけ笑ってしまう。
まだ会えると決まったわけじゃない。
あの日の少年が、この学校にいる保証もない。
それでも、不思議と胸は高鳴っていた。
春風が頬を撫でる。
私は小さく息を吸い込み、校門を見上げた。
「すー! おはようさん!」
突然、後ろから大きな声が響いた。
その声に、浮かれていた気持ちが現実へ引き戻される。
「悠……うるさい。もう高校生なんだから、少しは落ち着きなよ」
振り返ると、そこには見慣れた顔があった。
少し明るい茶色の髪を無造作に揺らし、人懐っこい笑顔を浮かべた少年。
藤原悠。
保育園の頃からずっと一緒にいる幼なじみ。
家も近く、何かあるたびに隣にいた存在。
今年の春からは、また同じ学校に通うことになった。
悠が鈴の横に並ぶ。
「それにしても、すーとまた同じ学校ってなんか変な感じするなぁ」
「保育園からずっと一緒じゃん」
「いや、高校まで一緒になるとは思わんやん?」
悠はいつものように笑う。
笑うたびにくしゃっと細くなる目は、小さい頃から変わらない。
でも鈴は少しだけ周りを見る。
神楽坂学園。
ここに来た理由は、兄の蓮がいるから。
……だけじゃない。
そして校門前。入学式が終わり、生徒たちが次々と校門を出ていく。
鈴は悠と一緒に蓮を待っていた。
「お兄ちゃん、遅いね」
「蓮にぃ、バスケ部の先生に捕まってるんちゃう?」
そんな話をしていると――
「鈴」
聞き慣れた声。
振り返ると、高い身長の男子生徒がこちらへ歩いてきた。
黒髪を短く整えた兄は、制服姿でもどこか頼もしさがあった。
「お兄ちゃん」
久しぶりに見る制服姿の兄。
鈴にとって、兄はいつも自分を守ってくれる存在。
でも蓮は少し心配そうに私を見る。
「無理するなよ」
「高校生活始まったばっかなんだから」
「蓮にぃ!」
校門の前で待っていた蓮の姿を見つけると、悠は嬉しそうに駆け寄った。
「また一緒にバスケできるやん!めちゃ嬉しい!」
そう言って、勢いのまま蓮の背中に飛びつく。
「おい!悠!危ねぇーよ!」
蓮はよろけながらも、どこか呆れたように笑った。
「高校生になってまでそのテンションかよ」
「ええやん。蓮にぃは蓮にぃやろ?」
昔から変わらない距離感。
鈴はそんな二人を見て、少しだけ笑った。
蓮と悠。
自分が知らないところでも、兄を支えてくれていた大切な人。
新しい学校生活への不安が、ほんの少しだけ軽くなった気がした。
「で、なんで遅かったの?」
私は二人の話を遮るように聞いた。
「先生に捕まってさ。片付けまで手伝わされてた。」
「ははっ!蓮にぃらしいわ!」
悠が笑うと、蓮は「別に大したことじゃねぇよ」と肩をすくめた。
「じゃ、行くか。暁寮まで案内する。」
その一言で、止まっていた時間が動き出した。
この時の私は、あの場所でたくさんの出会いと別れが待っているなんて、まだ知らなかった。

