「久し振り。そちらの方は?」
「星宮 神楽さん」
神楽は関係性も言わないまま、いきなりフルネームを言ったって困るだろうと思っていた。
「あーーーーー!!!神楽さん。初めまして。いつも和葉がお世話になっております。」
明らかに不自然な反応に神楽は戸惑いながら
「星宮です。江波さんとは会社の上司と部下の関係で、お世話になっているのは私の方で・・・。」
「存じております。あなたのおかげで和葉は・・・。」
「ちょっとお母さん!!」
「あ・・・。とりあえず中入りましょう。ごめんなさいね、立ち話なんて。」
「いえ、とんでもないです。」
家の中に入ると、沖縄の家とは思えないアンティーク調の可愛い家具が沢山あった。
キョロキョロしている神楽の前を歩く江波が言う。
「沖縄の家っぽくないでしょ。」
「イメージではないですけど可愛いです。」
「でしょ、完全私の趣味だけど笑」
廊下を歩いた先にあるリビングのソファに通された神楽。
「神楽ちゃんは飲み物どうする?コーヒー?紅茶?」
「・・・お酒あります?」
「昼間から酒飲むのwww」
「いいじゃない、今日の今日帰るわけじゃないんでしょ?」
「そうですね、暫くこっちにいようと思ってて。」
「まぁそうなの。連休いいわねぇ。」
「いや、この子連休じゃないから、今日も出勤だったんだから。」
「・・・・・。」
「・・・何かあったのね。まぁいいじゃない。連絡は入れているんでしょ。
神楽ちゃんはお酒は何好きなの?」
「特にこれっていうのはないですけど、酸味強いお酒好きです。」
「お母さん、パインジュースあったっけ?この子パインサワー好きなんだけど。」
「覚えててくれたんですね。」
「だってそれしか飲んでなかったじゃん。」
日々、多忙を極める江波が飲み会のことを覚えていたことに神楽は嬉しくて
うつむいたフリをしてにやけていた。
「パインも酒もあるから作れるわよ。少し待っててね。和葉はどうする?」
「私はビールでいいよ。」
「お待たせ。」
「ありがとうございます。」
「「「かんぱーい!!!」」」
「和葉、あの話は神楽ちゃんには内緒なの?」
「いや、言ってもいいけど・・・。」
???
「この子ね、愛想悪いでしょ。」
「え・・・・・。えーと・・・・・。」
「ふふふふふ、素直ね。」
「そんなことないですよ今は。」
「今は、ね。」
「あ、いや、そうじゃなくて。」
「神楽。いいよ、もう母は察したから。」
「すみません・・・・・。」
「いいのよ。和葉はね、愛想悪いし機嫌すぐ顔に出るしコミュニケーション能力もそんなにないからね。よく敵作りやすいって言ってた。でも、自分のスタンスを崩したくないからそれで嫌われているのは仕方ないってね。」
江波の母親の話を聞いて以前、江波が似たようなことを言っていたことを思い出した。
「でも、ある日うちに帰って来た時、とっても嬉しそうで。話を聞いてみたら私についていきたいと言ってくれた子がいるって話してくれたの。その子はこれから伸びしろが凄くある子だから私についてきたいと思ってくれているなら見守っていきたい。でも自分には人事権ないからどうなるかなって。」
「え・・・・・。」
「神楽ちゃんのことみたいよ。」
驚きと本当に自分のこと?と半信半疑で江波の方を見た神楽。
「前の飲み会の時もそうだけど、その前に手紙くれたじゃん?今時手紙くれる人なんていないからそれ自体にもびっくりしたんだけどさ、書いてある内容読んで嬉しかったんだよ。」
「和葉は照れ屋だからあんまりわからなかったでしょ。」
「まぁ・・・・・。」
「飲み会でも感謝してるって言ってくれたり、ついていきたいって言ってくれたじゃん。
まさかそこまで慕ってくれているって考えてなかったし照れ隠しでちゃんと反応出来なくってごめんね、せっかく言ってくれたのに。」
「いや、私は寧ろ困らせちゃったかと思って。」
「なんでよ。」
「だってついていきたいって言ったってどうにも出来ないじゃないですか。
でも、私前例知ってるんです。小林さんと中道さんの話知ってますか?」
「あぁー、同じタイミングで沖縄来たよね。」
「そうです、しかも偶然ではないって。」
「そうなの?意図的に一緒に異動はうちの会社はしていないはずだけど」
「私も実際の経緯は知らないですけど、中道さんが小林さんを連れて行ったって聞いています。」
「そうなんだ、でも多分私が課長に伝えたところで同じようにはいかないと思う。」
「ですよね。」
「だから何か具体的な根拠がないとね。私も、もしそれが出来るならそうしてあげたい。神楽がそれで安心出来るなら。」
