朝ご飯は苦手だ。どんな大好物でも、なんとなく体が受け付けない。とはいえ、自分で作っているわけでもないから、残すのは気が引ける。四人掛けのダイニングテーブルに、トーストとウィンナーが並べられている。パジャマのまま定位置に着席し、いただきますと手を合わせる。
「おはよ」
身支度を整えたお母さんが、正面の席に座った。出発の時間が迫っているからか、着席と同時にフォークを手に取った。おはよ、と渇いた声で返し、食パンの端をのそのそかじる。
「夕飯、お願いしてもいい?」
朝食を食べながら夕食の心配をするお母さんに、「うどんでいい?」と提案する。お母さんはウィンナーを丸ごと口に放り込み、うん、と頷いた。
夕食作りを私が担当する頻度は、お母さんの仕事の忙しさ指数に比例する。先週からほぼ毎日、私が夕食を作っていた。お母さんは大学病院の医師だ。ここのところ研修や会議が立て込んでいる。
だけど、どんなに忙しくても、当直でない日は必ず家に帰って来る。そして、一緒にご飯を食べる。それは、3年前から始まった、私たちの習慣。どちらかが言い出したわけじゃない。いつの間にか、そうなっていた。
3年前のあの日を境に、私たちの生活は変わった。
