──突如、ぎゅ、と掴まれる私の手。
「……乃亜、ちょっと付き合って」
「え?……ちょ、っ……」
急に何かと思えば、有無を言わせず、ずいずい歩いていく唯斗。
「唯斗、痛い……」
怒っているのか、私の言葉を無視して、でもしっかりと手は握ったまま歩いていく。
家を出て100メートルくらいだろうか。
気づいたら緑色のフェンスの前に止まっていた。
塗装が剥がれた場所に太陽の光が反射して翡翠のように輝いている。
菱形の金網の先には、滑り台やブランコ、ジャングルジムに、ぽつんと置かれたベンチ。
昔よく遊んでいた、少し小さいけどあまり人が来ない、秘密基地のような公園。
そして、私が、優海と最後に会った場所だ。
「何、急に」
わざわざここに何の用があるの……。
嫌がらせかよと心の中で毒を吐く。
そのまま無言でベンチに座らされ、無言でラップに包まれたものを渡された。
まだ少し暖かい、綺麗な3角形のもの。
……お、おにぎり……?
「食べて」
………………
………は、?それだけ……?
「いいよ、お腹すいてないし」
「だめでーす。乃亜どうせ優海が死んでからまともに食べてないんでしょ」
「……」
ドストレート直球で当てられたのもだけど、いつもと変わらない様子で話す唯斗を見て考える。
……唯斗は、何か食べてるのかな。
渡してきたのも私の分だけだし、唯斗の家はいろいろと複雑だから帰っても食べる物を作ってくれる人もいない。
このおにぎりも、私のために作ってきてくれたんだと思う。
「乃亜細すぎだし、まじで折れそ………っ」
唯斗が話すのをやめた。というか喋れなくなったの方が正しいかも。
なんでかって?
私がおにぎりを唯斗の口の中に押し込んだから。
「唯斗もなんも食べてないでしょ。人の心配するくらいならまず自分の心配から!!」
一瞬、唯斗が目を見開いた。
なんで分かったの、とでも言いたそうな表情。
……やっぱり、10年以上も一緒にいればわかるようになるもんなんだな。
