あの日、君を救えなかった私は〜幼馴染を失った私達の、壊れてしまった恋〜

ただの同情だとか、デリカシーがないとか言われてもいい。


口にするとそれまで掠れていたものが、一気に現実のものになる。

もちろん、口にすることで気持ちが楽になる人もいる。

でも、一部の人には逆効果だ。
辛いことを自分の口から話すほど、自分を追い詰めるものはない。


「……」


唯斗は何も言わず、ただじっと優海のお母さんを見つめていた。


「……そうね。ごめんね、言うのが遅くなっちゃって」


ふ、と今にも消えてしまいそうな笑みを浮かべる優海のお母さん。
でも、その笑顔がどこか優海に重なって。

それを見ると何も言えなくなってしまって、拳をぎゅっと握りしめて、優海のお母さんの話を聞いた。


ぽつぽつと、一つ一つ話してくれたその内容には、優しい、私の知っている優海がいた。



今朝、バスケ部の優海は朝練に行こうと、しっかり「いってきます」と言って家を出たこと。

その途中にある交差点の隅で、今にも轢かれそうにもかかわらず、寝転がったままの子猫を助けようとした小学生の女の子がいたこと。

そこに車が突っ込んできて、その2人を庇った優海が事故にあったこと。

そして、運転手は飲酒運転だったということ。



優しい優しい、優海だ。

私は人を守るために自分を放り投げるなんてできないと思う。

向かってくる車がいるのに、目の前の全く知らない人を守るなんて、そんなことができるだろうか。

口に出すことは簡単かもしれないけど、ほとんどの人は自分が死ぬかもしれないという、その場の恐怖ですぐには動けないと思う。


別に、それは悪いことじゃない。それが当たり前なんだ。

それができる優海は本当に凄いんだ。

ただ優しいだけじゃできない、人を助けるという勇気と、そのために自分が犠牲になるかもしれないという一瞬の覚悟。

それと戦わないといけない。


どれほど怖かっただろう。不安だっただろう。




だからこそ──