あの日、君を救えなかった私は〜幼馴染を失った私達の、壊れてしまった恋〜

「どーぞ」

久しぶりに来た唯斗の家は、当たり前だけど、驚くほどに静かだった。

ひんやりとした大理石調の、日本とは違うトルコかどこかのホテルみたいな、長い廊下を歩く。



リビングに入って真っ先に目に入るのは、静かに置かれたソファ、まだ洗われていない食器、真っ暗な画面の大きなテレビ。

必要最低限の物以外全く置いていなくて、高級そうな家具が孤立しているように見える。


前に来た時よりもずっと『一人暮らしの家』になっていて、生活感の全くない片付いてるリビングが、寂しく感じてしまう。

そして、広すぎる家がより一層、寂寥感を際立たせているような気がした。

リビングだけで30畳以上あるんじゃないかな。
どう考えても、高校生が一人暮らしをする家ではなくて。



どこかで、『家は住んでいる人の心と同じだ』という話を聞いたことがあるけど、本当にその通りだと思ってしまう。

この家丸ごとが、唯斗の心の中を表しているようだ。


「こっち来て」


リビングを見渡していると、唯斗に手招きされた。

小走りで向かうと、そこにはこぢんまりとした部屋があって。
小さい、と言ってもベッドと勉強机のようなものを置けるくらいの広さはある。

そして、あちこちに散らばる服や、ぐちゃぐちゃのままの布団。


「ここ、俺の部屋。散らかっててごめん」


唯斗の部屋には中学のとき一度だけ、来たことがある。
でもそのときは、唯斗も私ももういっぱいいっぱいで考える余裕なんてなかった。


家が隣同士だから、昔はよく優海もつれてお互いの家を行き来していたけど、その頃はまだ小学生で唯斗の部屋はなかった。

そして、中学生になって、唯斗は自分の家に私たちを入れなくなった。

片付けが苦手な唯斗のことだから、その頃は散らかってるのかなとも思ったけど、今思うと唯斗が私たち相手にそんな気なんて遣うわけないのに、と思う。
別に悪く言ってるつもりはなくて、小さい頃から一緒の私たちは家族みたいなもの。

だから、明らかに不自然だったのだ。