あの日、君を救えなかった私は〜幼馴染を失った私達の、壊れてしまった恋〜

「乃亜ー!いくよー!」

そんな優海の声と一緒に、私に飛んできた水。

「ちょっとまっ……わっ」

塩分を多く含んだ海水は昨日買ってもらったばかりの服にかかって、ぺたりと肌にくっつく。

海の冷たい水は、夏の体に溜まった熱を少しずつ冷ましていく。

潮風に吹かれると、暑い外の空気から、いきなりクーラーガンガンに冷やされた部屋に入ったときのように少し肌寒い。


「って……さっき濡らさないでって言ったじゃん!!!お気に入りだったのに!」

「あ、そうだった。ごめん!」

「いや乃亜が海にワンピースなんて着てくるのが悪いだろ」

「仕方ないじゃん!今日着たかったんだから!」

「いや幼稚園児かよ」


素直に謝る優海と、ド正論をぶつけてくる唯斗。もう濡れてしまった以上どうにもできないから、諦めて横にいた唯斗に無言で水をかけた。


「あっれー、乃亜ちゃん何も言い返せないからって逆ギレはどうかと思うけどー」

「唯斗うるさい。あとちゃん付けキモい」

「まぁまぁ、ふたりとも落ち着いて……俺が乃亜に水かけたのが悪かったんだからさ……」


このままいけばさらに喧嘩がヒートアップして、歯止めが利かなくなることが分かっている優海は、いつも私と唯斗の喧嘩の仲裁をしてくれる。

私たち3人は物心ついたころから一緒にいる幼馴染。


自由奔放でいつでもうるさい私。

なにかあればすぐ突っかかってくる唯斗。
そして、どこまでも心が広い、すごく優しい優海。


2人とも、私の大切な親友だ。


……そして、私は秘かに、優海に恋心を抱いている。

優海の、砂糖菓子みたいな優しい笑顔に、私は好きにならずにはいられなかった。


……なんて、本人にこんなこと言うつもりはないけど。
私は今の友達のポジションで十分だ。


「あ、そうだ。みんなでアイス買いに行こうよ」

「食べたい!!!!!」

「俺も」


さすが優海だ。

すぐさま話題を変えて、私と唯斗にドンピシャなアイディアを持ってこれるのは長年一緒にいる優海にしかできない。


「競争だー!」とか言っていつもの駄菓子屋さんに走り出した唯斗。
私と優海は顔を見合わせて笑って、唯斗を追いかけた。





──そんな、中学1年生の夢を見た。