君に会いたいと願っても。

そして、同棲生活が始まって最初の朝。

「……ん。」

カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。

目を開ける。

いつもと違う天井。

一瞬、ここがどこなのか分からなかった。

でも、隣を見ると廉が眠っている。

「……あ。」

そうだった。

今日から、ここが私たちの家なんだ。

そう思うと、なんだか不思議な気持ちになった。

私はベッドからゆっくり起き上がる。

まだ少し眠そうな廉が、目をこすりながら顔を上げた。

「……幸?」

「おはよう。」

「おはよ……。」

まだ寝ぼけている。

私は思わず笑った。

「眠そう。」

「眠い。」

「起きて。」

「あと五分。」

「だめ。」

「五分だけ。」

「昨日もそれ言ってたじゃん。」

「昨日?」

「……なんでもない。」

二人で笑う。

キッチンへ向かう。

冷蔵庫を開ける。

「何食べる?」

「んー……。」

廉が後ろから覗き込む。

「パンある。」

「じゃあパン。」

「飲み物は?」

「コーヒー。」

「朝から?」

「朝だから。」

「意味分かんない。」

そんなくだらない会話をしながら、朝ご飯を準備する。

トースターの音。

コーヒーの香り。

窓から入ってくる春の風。

昨日までとは、何もかも違う朝。

でも、不思議と嫌じゃなかった。

むしろ――

少しだけ、嬉しかった。

「幸。」

「ん?」

「これから毎朝こんな感じなのかな。」

廉が笑いながら言う。

私は少し考えてから、笑った。

「たぶんね。」

「そっか。」

「嫌?」

「全然。」

廉がそう言って笑う。

私も笑った。

これから始まる、新しい毎日。

学校もない。

制服もない。

毎朝同じ道を歩くこともない。

それでも。

私たちには、これから一緒に作っていく日々がある。

春の朝。

新しい生活が、静かに始まった。