そして、もう一つ。
私たちの生活にも、大きな変化が訪れようとしていた。
「幸。」
ある日の夕方。
リビングでスマホを見ていると、お母さんから声をかけられた。
「ちょっと話があるんだけど。」
「なに?」
私は顔を上げる。
両親が並んで座っている。
なんだか少しだけ、いつもと違う雰囲気だった。
「実はね、海外の仕事が決まったの。」
「海外?」
「うん。しばらく向こうで仕事をすることになった。」
私は驚いて、二人の顔を見る。
「どのくらい?」
「四年くらいになると思う。」
「……四年?」
思っていたより長い。
高校を卒業したばかりの私にとって、四年という時間はあまりにも長く感じた。
「じゃあ、私一人でここに住むの?」
すると、お母さんが少し考えるように口を開いた。
「それについてなんだけど。」
「うん。」
「廉くんと一緒に暮らすっていうのはどう?」
「……え?」
思わず固まった。
「廉と?」
「もちろん、二人でちゃんと話し合って決めることだけど。」
お父さんも続ける。
「幸ももう高校を卒業したし、仕事も始まる。生活のこともあるから、信頼できる人と一緒に暮らす方が安心だと思ってる。」
私はしばらく黙っていた。
廉と一緒に暮らす。
今まで遊びに行ったり、泊まったりしたことはある。
でも、毎日一緒に生活するとなると話は別だ。
朝起きて。
一緒にご飯を食べて。
仕事から帰ってきて。
同じ家で眠る。
そんな毎日を想像すると、少し恥ずかしくなった。
「……廉は?」
「もう話してあるよ。」
「え?」
「幸がいいなら、一緒に暮らしたいって。」
その言葉を聞いた瞬間、胸が少しだけ熱くなった。
私は俯きながら、小さく笑った。
「……私も。」
「え?」
「私も、廉と一緒に暮らしたい。」
両親は顔を見合わせて笑った。
「じゃあ、決まりね。」
こうして。
卒業したばかりの春。
私たちは、一緒に暮らし始めることになった。
