君に会いたいと願っても。

そして迎えた、約束の日。



待ち合わせ場所に向かうと、遠くから廉が手を振っていた。



「幸!」



「廉!」



久しぶりに会っただけなのに、なんだか少し照れくさい。



「仕事、決まった幸ちゃん。」



「決まったよ。」



「おめでとう。」



「ありがとう。」



「じゃあ今日は、いっぱい遊ぼう。」



「うん。」



その日は、何をするか細かく決めていなかった。



ただ、やりたいことを一つずつ叶えていくことにした。



海へ行った。



春の海は少し冷たかったけれど、二人で砂浜を歩いた。



「寒い。」



「だから言ったじゃん。」



「でも来たかったんだもん。」



「俺も。」



二人で笑った。



廉は海を眺める私の後ろ姿を、こっそりスマホで撮った。



「……。」



「何してるの?」



「何も。」



「今撮ったでしょ。」



「撮ってない。」



「絶対撮った。」



「ばれた?」



「ばればれ。」



二人で笑う。



そのあと、私も廉が海を見ている隙に、後ろ姿を撮った。



「……幸。」



「何?」



「今、俺撮った?」



「撮ってないよ。」



「絶対撮ったでしょ。」



「ばれた?」



「ばればれ。」



また笑った。



何枚も写真を撮った。



海の景色。



夕焼け。



砂浜。



二人の影。



そして、お互いの何気ない後ろ姿。



どれも、特別な写真ではない。



でも、あとから見返したらきっと大切になる。



夕方になると、空が淡いオレンジ色に染まった。



私はスマホを構えた。



「廉。」



「ん?」



「こっち来て。」



「何?」



「写真撮る。」



「また?」



「いいから。」



廉が笑いながら隣に立つ。



シャッターを切る。



二人で写った写真を見ながら、私は笑った。



「今日、楽しいね。」



「うん。」



「なんか、久しぶり。」



「また泊まりに来る?」



「え?」



「久しぶりに泊まろうよ。」



私は少し驚いて、それから笑った。



「いいよ。」



その夜。



久しぶりに一緒に過ごす時間は、昔と変わらなかった。



くだらない話をして。



笑って。



眠くなるまで話して。



何度も「楽しいね」と言った。



卒業して、学校はなくなった。



友達とも、毎日会うことはなくなった。



これから私たちは、それぞれ違う生活を始めていく。



それでも。



こうして一緒に笑える時間は、まだちゃんと残っていた。



春の夜。



窓の外では、少しずつ桜が咲き始めていた。