そして、卒業式当日。
朝から学校は、いつもとは違う空気に包まれていた。
廊下には、先生たちからのメッセージが貼られている。
教室には、卒業を祝う飾りが並んでいた。
黒板には、誰かが大きな文字で、
「卒業おめでとう」
と書いていた。
その文字を見た瞬間、胸の奥がぎゅっとなる。
「本当に卒業するんだ……。」
私は小さく呟いた。
友達が私の肩を叩く。
「泣かないでよ?」
「まだ泣いてないし。」
「顔、もう泣きそう。」
「そっちだって。」
「私は泣くよ。」
そう言って、友達が笑う。
私も笑った。
でも、その笑顔の奥には、少しだけ寂しさがあった。
卒業式が始まる。
名前を呼ばれる。
卒業証書を受け取る。
拍手が聞こえる。
その一つ一つを、私は噛みしめるように受け止めた。
そして式が終わった。
教室に戻ると、みんなが泣いていた。
笑いながら写真を撮る人。
先生に抱きつく人。
友達同士で「また遊ぼうね」と約束する人。
私も何枚も写真を撮った。
笑って。
泣いて。
また笑って。
最後まで、私たちはいつも通りだった。
そして、最後に廉のところへ向かった。
「廉。」
「ん?」
「写真撮ろ。」
「いいよ。」
二人で並ぶ。
スマホを構える。
「笑って。」
「笑ってるって。」
「もっと。」
「これ以上?」
「もっと。」
二人で笑った。
シャッターが切られる。
その一枚に、高校最後の私たちが残った。
「……ありがとう。」
私が言う。
「何が?」
「全部。」
廉は少し驚いた顔をして、それから笑った。
「俺も。」
校門を出る。
春の風が吹いている。
桜の蕾は、まだ開いていなかった。
でも、もうすぐ咲く。
私たちの高校生活は、今日で終わる。
友達とも、先生とも、この学校とも、今日で一度お別れ。
それでも。
私は廉の手を握った。
「これからもよろしくね。」
「こちらこそ。」
二人で笑う。
