君に会いたいと願っても。

それからの日々は、あっという間に過ぎていった。



付き合い始めて、二ヶ月。



私たちの毎日は、思っていたよりずっと穏やかで、楽しかった。



朝、教室に入れば、



「おはよ。」



「おはよう。」



と、いつものように挨拶をする。



休み時間にはくだらない話をして、放課後になれば一緒に帰る。



特別なことなんて何もない。



それでも、私は毎日が楽しかった。



そんなある日の帰り道。



ふと、私は廉に聞いた。



「ねえ、廉ってチョコ好き?」



「チョコ?」



「うん。」



「好きだけど。」



「ふーん。」



「何?」



「別に。」



私は何でもないふりをして笑った。



でも、頭の中ではもう決めていた。



今年のバレンタインは、廉に本命チョコを作ろう。



二月十四日。



学校が終わったあと、私は小さな袋を両手で抱えていた。



朝からずっと緊張していた。



ちゃんと喜んでくれるかな。



美味しいって言ってくれるかな。



そんなことばかり考えていた。



「幸?」



「……ん?」



「今日なんか静かじゃない?」



「そう?」



「うん。」



廉が不思議そうに私を見る。



私は少しだけ深呼吸した。



そして、袋を差し出した。



「これ。」



「え?」



「バレンタイン。」



廉は目を丸くした。



「俺に?」



「うん。」



「……本当に?」



「本当に。」



廉は袋を受け取ると、少し照れたように笑った。



「開けていい?」



「今?」



「うん。」



「恥ずかしいんだけど。」



「俺も恥ずかしい。」



二人で笑った。



廉が袋を開ける。



中には、私が一生懸命作ったチョコレートが入っていた。



「……すご。」



「そんな大したものじゃないよ。」



「いや、嬉しい。」



廉はチョコを一つ手に取った。



「食べていい?」



「うん。」



口に入れた瞬間、廉の表情が少し変わった。



「……。」



「どう?」



「めっちゃ美味しい。」



「ほんと?」



「うん。めっちゃ美味しい。」



そう言って、廉は笑いながらもう一つ手に取った。



「ちょっと、食べすぎ。」



「だって美味しいんだもん。」



「ちゃんと味わってよ。」



「味わってるって。」



また二人で笑った。



チョコレート一つで、こんなに嬉しくなるなんて思わなかった。



「ありがとう、幸。」



廉が少し照れながら言った。



「……どういたしまして。」



私も照れながら笑う。