君に会いたいと願っても。

それから、少しずつ時間は過ぎていった。



二月。



まだ朝の空気は冷たく、校庭には冬の名残が残っていた。



けれど、窓から差し込む光は少しずつ柔らかくなっていた。



「最近、日が長くなったね。」



放課後、窓の外を見ながら廉が言った。



「ほんとだ。」



「もうすぐ春だな。」



「……うん。」



その言葉を聞いて、私は少しだけ寂しくなった。



春が来るということは、卒業が来るということ。



あと少しで、この教室とも、この制服とも、この毎日とも離れてしまう。



「卒業したくないな。」



思わず口にすると、廉が私を見る。



「俺も。」



「廉も?」



「うん。」



「意外。」



「なんで?」



「廉って、早く卒業したそうだから。」



「まあ、それはそうだけど。」



廉は笑った。



「でも、今みたいに毎日幸と会えるのは、なくなるじゃん。」



その言葉に、胸が少し熱くなった。



「……そっか。」



「だから、ちょっと寂しい。」



私たちはしばらく黙って窓の外を眺めた。



校庭では、部活動をしている生徒たちの声が聞こえる。



いつもと同じ放課後。



いつもと同じ学校。



なのに、残り時間を意識するだけで、すべてが少し特別に見えた。



「ねえ、幸。」



「ん?」



「卒業するまでに、やりたいことある?」



「やりたいこと?」



「うん。」



私は少し考えた。



卒業旅行。



友達との思い出。



制服でどこかへ出かけること。



廉ともっと一緒にいること。



いろんなことが頭に浮かんだ。



「……いっぱいあるかも。」



「じゃあ、全部やろうよ。」



「全部?」



「うん。時間ないし。」



廉が笑う。



「卒業まで、まだ少しあるから。」



私はその言葉に頷いた。



残された時間は、思っているより短い。



だからこそ。



この冬が終わる前に。



この制服を脱ぐ前に。



私は、今しかできないことを全部、大切にしておきたかった。



窓の外では、冷たい風に揺れながら木の枝が小さく揺れていた。



まだ花は咲いていない。



でも、春は確実に近づいている。



私たちもまた、少しずつ未来へ向かって歩き始めていた。