君に会いたいと願っても。

水族館を出た頃には、空が少しずつ夕方の色に変わっていた。



冬の日は短い。



さっきまで明るかった空が、いつの間にか薄いオレンジ色に染まっている。



「寒くなってきたね。」



「うん。」



私はマフラーに顔を埋めた。



すると廉が、繋いでいた手を少し強く握る。



「カフェでも行く?」



「行きたい。」



「じゃあ探そう。」



二人で歩きながら、近くのお店を探す。



しばらく歩いていると、小さなカフェを見つけた。



店内に入ると、外とは違う暖かさに包まれた。



窓際の席に座り、私は温かいココアを頼んだ。



廉はコーヒー。



「やっぱりココアなんだ。」



「何?」



「幸、ココア好きだなって。」



「好きだよ。」



「クリスマスも飲んでたじゃん。」



「よく覚えてるね。」



「覚えてるよ。」



廉はそう言って笑った。



私は少し照れながら、ココアを一口飲んだ。



甘くて、温かい。



冷えていた体がゆっくりと温まっていく。



「今日、楽しかったね。」



廉が言った。



「うん。楽しかった。」



「また行こうね。」



「次はどこ行く?」



「幸はどこ行きたい?」



「うーん……。」



私は少し考える。



「また水族館でもいいかも。」



「そんなに好き?」



「好き。」



「じゃあ、また行こう。」



「ほんと?」



「うん。」



そんな会話をしていると、ふと静かな時間が流れた。



窓の外を見る。



街を歩く人たち。



夕暮れの空。



冬の冷たい風。



その景色を眺めながら、私はふと思った。



「ねえ、廉。」



「ん?」



「卒業したら、どうするの?」



廉は少し驚いたように私を見る。



「急だね。」



「なんとなく。」



少し前までは、卒業なんてまだ先のことだと思っていた。



でも、気づけばもう目の前まで来ている。



「俺は、卒業したら働くかな。」



「そっか。」



「幸は?」



「私も……まだちゃんとは決めてない。」



そう答えると、廉は少し黙った。