君に会いたいと願っても。

会話は途切れたり、また始まったり。



学校の話。



友達の話。



卒業の話。



本当にどうでもいい話。



でも、そんな時間が楽しかった。



水族館に着くと、入口には大きな水槽があった。



中にはたくさんの魚が泳いでいる。



「わあ……。」



思わず声が漏れる。



「幸、こういうの好きだもんね。」



「なんで知ってるの?」



「前に言ってたじゃん。」



「覚えてたの?」



「覚えてるよ。」



その一言が、なんだか嬉しかった。



中へ進んでいくと、青い光に包まれた大きな水槽が現れた。



ゆっくり泳ぐ魚たち。



水の揺らめき。



静かな館内。



そして、その奥にいたのはクラゲだった。



ふわふわと水の中を漂っている。



「綺麗……。」



私は水槽の前で立ち止まった。



「ずっと見てられる。」



隣にいた廉も水槽を見つめていた。



「幸って、クラゲっぽい。」



「え、どういう意味?」



「なんとなく。」



「またそれ?」



「うん。」



「適当じゃん。」



二人で笑った。



その後も、ペンギンを見たり、イルカを見たり、お土産を見たり。



気づけば時間はあっという間に過ぎていた。



「お腹空いた。」



私が言うと、廉が笑った。



「やっぱり?」



「何その顔。」



「幸なら言うと思った。」



「もう。」



水族館を出た頃には、空が少しずつ夕方の色に変わっていた。



冬の日は短い。



冷たい風が吹いて、私はマフラーを少しだけ強く巻いた。



「寒い?」



「ちょっと。」



すると廉が私の手を取った。



「これなら?」



突然のことに、少し驚く。



でも、嫌ではなかった。



むしろ、嬉しかった。



「……あったかい。」



「よかった。」



繋いだ手から伝わる温かさが、冬の寒さを忘れさせてくれる。



「次、どこ行く?」



廉が聞く。



私は少し考えてから笑った。



「どこでもいいよ。」



「じゃあ、適当に歩く?」



「うん。」



今日の予定は、もう何も決まっていない。



でも、それでよかった。



どこへ行くかよりも、



誰といるかの方が大切だったから。



私たちは手を繋いだまま、夕暮れの街を歩き始めた。