君に会いたいと願っても。

一月のある日。



今日は、廉と水族館へ行く日。



付き合い始めてから、初めてのちゃんとしたデートだった。



朝、鏡の前で何度も自分の姿を確認する。



「……これで大丈夫かな。」



いつも学校へ行く時とは少し違う服。



髪もいつもより少しだけ丁寧に整えた。



別に、特別なことをするわけじゃない。



ただ水族館へ行くだけ。



そう思っているのに、なぜか朝から落ち着かなかった。



スマホを見ると、廉からLINEが届いていた。



『もう着くよ。』



「早っ。」



私は急いで家を出た。



外に出ると、冬の冷たい空気が頬に触れる。



吐いた息が白くなった。



マフラーに顔を埋めながら、待ち合わせ場所へ向かう。



少し早く着いた私は、スマホを見ながら廉を待った。



すると、



「幸!」



聞き慣れた声がした。



振り返ると、廉が手を振りながらこちらへ歩いてくる。



「おはよう。」



「おはよう。」



いつもと同じ挨拶。



なのに、今日は少しだけ恥ずかしい。



「今日、なんかいつもと違うね。」



廉が私を見る。



「え?」



「いや、服。」



「あ……。」



急に恥ずかしくなって、私は目を逸らした。



「変?」



「全然。似合ってる。」



「……ありがとう。」



廉も少し照れたように笑った。



「じゃあ、行こっか。」



「うん。」



二人並んで歩き始める。



駅までの道。



冷たい風が吹くたびに、マフラーが揺れる。



「今日、何する?」



「水族館行くんじゃないの?」



「うん。でもその後。」



「何も決めてない。」



「俺も。」



二人で顔を見合わせて笑った。



「じゃあ、今日は本当に流れに任せよう。」



「そうだね。」



電車に乗ると、窓の外には冬の景色が流れていく。