絶世の令嬢は求愛される

 この学園には水亀(みずがめ)君というクラスメイトがいる。

 だけど、私は彼に興味がない。
 アルと日かるちゃん以外には。

「もしかして、太陽さん?」
 水亀君に声をかけられた。

「何かしら?」

「落とし物」

 彼の手元を見ると、
 細い白いリボンがあった。
 私がいつも髪に結んでいるものだ。
 いつ落としたのだろう。

「ありがとう」

 私はリボンを受け取ると、
 すぐにその場を去った。

 ほんの一瞬の出来事だったけれど、
 水亀君の穏やかな雰囲気を感じ取ることができた。
 お人好し、というのだろうか。

「闇姫。もしかして、例の男に惚れたのか?」

 どこからか現れたアルが私をからかう。

「まさか」
「一瞬、顔が赤かったぞ」
「気のせいよ」

 私は女子トイレへ向かい、
 受け取った細いリボンで髪を左側のワンサイドアップに結び直した。