溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~

「あの……それで、返事を」

 彼が期待するような表情でぐいっと迫ってくる。
 綺麗な顔が目の前に迫り、あわあわする。

「え! あ、そうね」

 そんな急に言われても、いったいどうしたらいいのよ。
 ここで断ったら、この人とはこれでお別れってことになるのかな?
 そう考えたら、胸がチクッと痛んだ。

 あれ? おかしい。なんだか胸がざわつく。
 ……このまま終わりたくないって思ってる?

 戸惑う私に、彼は優しく微笑みかける。

「お付き合いっていっても、堅苦しく考えないで。まずはお友達からでいいです。
 ゆっくりと関係性が変わっていくっていうのも、素敵ですよね。
 俺は、あなたが振り向いてくれるまで、待ちます」

 そのまっすぐな想いに、胸がじんとあたたまる。

 そんなことでいいの? っていうか、それは友達であって、付き合ってるって言わないんじゃないの?

 でも、優しさが伝わってくる。
 きっとどこまでも、自分より私のことを優先してくれる。

 どうしよう。すごく嬉しいんだけど。
 この人のこと、振りたくない。
 もう少し傍で、彼のことを知っていきたい。

 そう、思ってしまった。

「友達からなら……」

 口からこぼれる。

「え、いいの!?」

 すぐに喜びに満ちた顔で、彼がずずいと迫ってくる。
 目の前には、神々しいほどの美しい顔が。

 視線を逸らしつつ、小さく頷いた。

「うん。まずはお友達から」

「ありがとう!」

 勢いよく彼は私を抱きしめる。
 彼の温もり、感触、匂いにあてられ、のぼせそうに体が熱くなる。

 ひ、ひえ~。近い、近い、近いって!
 鼓動がバクバクする。

 少し落ち着きを取り戻した彼が、私からそっと体を離した。

 ほっとしながら、ふと考える。
 あっさりOKしちゃったけど、本当によかったんだろうか。

 胸に、一抹の不安がよぎった。


 ***


 というのが、私たちが付き合うようになったきっかけ。

 それから三ヶ月が経ち、正式に付き合うことになった。

 だって、あきらは本当に誠実で優しくて、誰よりも純粋だったから。
 この人なら信用できる、そう思えた。

 一緒に過ごしていると、ほっとするし、癒される自分に気づいた。
 可愛い性格してるのよ。自然と惹かれちゃう。

 ――そして、正式にお付き合いが決まったとき。

 私は、彼が実はアイドルだったことを知った。

 まさか、あきらがあのスーパーアイドルだったなんて。

 スターライトのアキラ。
 今もっとも勢いのある若手アイドルだ。
 テレビをあまり見ない私でも知っている国民的アイドル。

 驚きすぎて、目が点になったよ。

 彼を太陽に紹介したとき、弟はすぐに彼がアイドルだと見抜いた。
 こちらが言う前にね。

 弟も、彼の存在は知っていたらしい。
 私が最初わからなかったって言ったら、
「知らない方がびっくりだよ!」って、あきれられたっけ。

 それで、やっと納得がいった。
 どうして彼は外に出るとき、いつも帽子とマスクをしているんだろうって不思議に思っていたけど、
 そりゃそうだよね、アイドルなんだもん。

 私はずっと、彼なりのポリシーでもあるんだろうか、なんて呑気に考えていた。
 そのうち話してくれるだろう、人には言いたくないことの一つや二つあるよねえ、なんて思ってさ。

 実際は、とんでもない真実が隠されていたってわけ。

 すごい話だよね。

 こうして私は、人気アイドルと付き合う女子高生という、
 ……世間から見れば、ちょっと珍しい立場になってしまったのだった。