溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~

 あきらがぽつりとつぶやいた。

「……星の家ってさ。前から思ってたけど、かなり古いよね?」

 ドキッ。たしかに、この家はかなりのボロ家だ。
 でも一軒家だし、そんなに変には思われないだろうと高を括っていたけど。やっぱり気づいた?

 そっとあきらを盗み見る。
 すると、彼とばっちり目が合った。

「ね、星ってさ。もしかして、かなり貧乏だったりする?」

 直球!

 今まであきらに心配かけたくなくて、ずっと触れないようにしてきた。
 悟られないように、必死に気をつかっていたのに。

 でも、これだけ頻繁に家に出入りしてたら、バレるのも時間の問題だと思ってた。
 というか、ここまでバレなかったのが奇跡かも。

 観念するか。
 はあ、と大きくため息を吐く。

「そうだね。かなり貧乏だと思う」

「それって、大変? つらい?」

 あきらが興味津々の様子で、ぐっと顔を近づけてきた。

 嫌味とかそういうんじゃない。彼の目は真っ直ぐで、純粋な光を帯びている。
 きっとあきらにとって貧乏なんて、想像できない世界なんだろうな。

「うーん、まあつらいこともあるけど……太陽と二人で幸せに暮らしてるよ。
 お金がなくても、この暮らしには満足してるんだ。贅沢言ったらきりないし、住めば都って言うしね。
 なんとか節約しながら、楽しく生活してる」

 そう言って、にこりと笑った。

 これは本音。
 この暮らし、私はけっこう気に入っている。

「ふーん、そうなんだ」

 あきらは部屋を見まわしながら、何か考えるように唸った。
 そして、ふっと真剣な顔になり、私に軽く頭を下げる。

「今まで何も知らなくてごめん。これからは、困ったことがあったら言って。
 俺、星のためなら何でもするから」

 ぐいっと距離を詰め、切実な瞳を向けてくる。

 あきらの優しさと純粋さが、まっすぐ胸に届く。

 だから、今まで心配かけたくなかったんだよ。
 貧乏で苦労してるなんて知ったら、あきらは絶対にこうして心を砕いてくれる。

 負担をかけたくなかったのに。
 でも、きっとあきらはそれを負担だなんて思わないんだろうな。

 今ならそう思える。

「ありがとう、あきら。私、幸せだよ。
 ……あきらや、みんながいてくれるから」

 にこりと笑うと、あきらがぷくっと頬をふくらませた。

「みんなも? 俺だけでいいよ」

 そう言うと、突然、唇が触れた。
 ちゅっと軽い、優しい口づけ。

「星が大好き。これからもずっと一緒にいたい。
 ずっと、ずーっと、愛してる」

 ――トクン。心臓が跳ねる。
 想いが胸いっぱいに広がって、あふれてくる。

「……私も」

 言いかけた瞬間、再びあきらに口づけられた。
 今度は深く、長い口づけ。

 熱い想いが伝わってきて、彼でいっぱいになる。

 気づけば私はあきらにしがみついていた。
 あきらも強く抱きしめ返し、ぐっと引き寄せてくる。

 ふたりの荒い吐息だけが、台所に響いた。

 そのまま、想いを確かめ合うように、何度も熱い口づけを交わした。



 唇が離れた瞬間、あきらと視線がぶつかる。
 その瞳に宿る熱にあてられて、全身に熱が駆け巡った。

「ねえ、星」

 彼がそっと私の頬に触れ、真剣な目で言う。

「俺のお嫁さんになって」

「――えっ!」

 驚きで固まったままの私を見て、あきらがふっと笑った。

「ふふ、可愛い。……返事は?」

 自信たっぷりの笑み。
 さっきから、掻き乱されっぱなしだ。

 突然すぎるよ。でも、嬉しい。

 彼をまっすぐに見つめ返した。

「私も、あきらのことが大好き。
 お嫁さんにしてください」

 言い終えると、あきらの顔がぱっと輝いた。

「……! 星っ」

 強く抱きしめられ、息が詰まるほどの力で引き寄せられる。
 そのあたたかな温もりに抱かれ、胸がいっぱいになった。

 耳元で「大好き」「愛してる」と何度も囁かれる。
 その一つ一つが、心に染みていく。

 これからも、ふたりで仲良く、いつまでも共に生きていこうね。

 ――あきら。