溺れるほど、きみが好き~国民的アイドルと初恋の幼馴染に奪い合われて、困ってます~

 ジェットコースターを堪能……といっても、私は苦手で全然楽しくなかったけど。

 でも太陽は大満足の様子で、隣で嬉しそうに笑っている。
 そんな顔を見ていると、こっちまで頬が緩んでしまう。

 やっぱり、弟の笑顔っていいなあ。

 出口を抜けると、別々の方向からあきらと守兄が駆け寄ってくる。
 二人の視線がぶつかったかと思うと、同時にふんっと顔を背けた。

 犬猿の仲って、こういうのを言うんだろうな。

 思わず大きなため息がもれる。

 そんな中、太陽が「次はコーヒーカップに乗りたい!」と元気いっぱいに言いだした。

 コーヒーカップ。
 つまり、四人で一緒に?
 うーん、でもあの二人が素直に乗るかなあ。

 と、悩んでいる間に、太陽が二人の背中をぐいぐい押していく。
 そして、あれよあれよという間に私たちは四人で一つのコーヒーカップに乗ることになっていた。



 とてつもなく気まずい。

 私は視線を彷徨わせる。
 右にあきら、左に守兄。見事に挟まれて座る羽目になった。

 し、視線が痛い。

 二人とも、私をじっと見つめてくる。
 そして、ふいに視線がぶつかると睨み合いが始まる。

 オーラがバチバチ飛び交っていて、とてもじゃないけど落ち着けない。
 こんな空気で楽しめるわけないよ。
 ……太陽は楽しそうだけど。

 目の前で盛り上がる弟を、じろっと睨みつける。
 まあ、彼には関係ないことか。

 やがて機械が動き出しても、その状態は変わらなかった。

 太陽が一人ではしゃぐのを前に、私は俯いて沈黙を守る。
 あきらと守兄は、私を見つめるか、互いに鋭く睨み合うか。その繰り返しだった。


 無事、なのかどうかはわからないけど。
 コーヒーカップから降りた私は、ほっと息をついた。

「つ、疲れた……」

 魔のトライアングルから、ようやく脱出。
 けれど降りた今も、二人はまだ睨み合っている。

 も、もういい加減やめてよ。

 ひとり落ち込んでいると、太陽が元気いっぱいに声をかけてきた。

「姉ちゃん、楽しかったね! 次は観覧車に乗ろうよ」

 彼が指さしたのは、この遊園地でも名物の大観覧車だった。

 か、観覧車って。
 嫌な予感しかしないんだけど。



 観覧車の列に並ぶとすぐに、二人の言い争いが始まった。

「いやだね。俺は星の隣じゃなきゃ絶対に乗らない!」

 あきらが拗ねた顔で、棘のある声を放つ。

「なにをわがまま言ってるんだ。大人げない」

 守兄は呆れた様子で、鼻で笑った。
 空気がまた一気にピリつく。

 誰が私の隣に座るか。たったそれだけのことで、もう大揉め。

「おまえだって、どうせ星の隣がいいって思ってるんだろ!」

「そうだね。君に座らせるくらいなら、俺が座る」

「っ……やっぱりそうじゃねえか! ぜってぇ譲らないからな!」

「望むところだ」

 バチバチと火花が散る。

 ど、どうしよう。

 私があたふたと二人を見守っていると、
 太陽がそっと近づいてきて、小声で囁く。

「姉ちゃん。僕、いいこと考えた」

「え?」

 太陽の瞳がいたずらっぽく輝く。
 何を言い出すのか、嫌な予感とほんの少しの期待が胸をよぎった。