王国では釣りの人気が高い。とある雑誌の調査で、国民の八割の趣味が釣りだという調査調べがあるほどだ。
魚が乱獲されないよう、釣りをしたい場合は許可を取らなければいけない法律になっており、アスレチックパークでの漁業権が昨日ようやく取れたのだ。ポーラに頼んで事前に予約申請を入れていたにも関わらず、である。夏に人が集まりやすい保養地区とは言え、どれほど人気か察していただけるだろう。
そんな訳で。アナベルとイーサンは、ポーラとジャックと共に、屋敷近くのアスレチックパークへ川遊びに来た。ウォーターエリアは名前の通り。大地を駆け木々の遊具で作り上げたアスレチックエリアに対し、池や河を主役に船遊びや魚釣り、河原ではバーベキューも楽しめる。
まずは念願の釣りを楽しむ。靴を川用に変え、川の流れに流されないように浮袋も身につけたアナベルとイーサン、ポーラはさぶんと足を浸しながら釣り糸を垂らす。ジャックはのんびり椅子に腰掛け、三人を見守っている。
一ヶ月前に初めて釣りをやったアナベルであったが、今日はコツを掴み、ひょいと魚を釣っていく。小さな魚はリターンして、大きな魚を狙う。
イーサンが一匹、アナベルとポーラが三匹ずつと結構な数がとれた。
連れた記念を残すために魚拓を取ってから、七匹をジャックが手際よく血を抜き、内臓を取る。人数分の串を刺して姿焼き、三匹は衣をまとわせ油で揚げ、香味野菜で炒めた。
「ばあさん、骨には気をつけなさいよ。若いお2人さんも負けじと食いなさい」
そのまま焼いた魚はふっくらした身に、パリパリと少し苦味のある皮が美味しい。塩を振り、醤油や柑橘酢をかけて食べれば味が変わった。
香味野菜で炒められた魚は唐揚げのような食感だ。しゃきしゃきとした野菜の食感と合わさるのも、ジャックが持ってきてくれたパンに挟んで食べても、非常に美味しい。
すでに頬いっぱいに張っていたアナベルとイーサンは、何度も頷きながら夢中になって魚を堪能した。
食事を摂った後は、魚のいない場所へ移り水と戯れる。川辺で裸足になって、恐る恐る水に足をつければ芯まで冷えそうなほど冷たかった。暑い日差しを浴びながらでは、その対比が強く涼しさが際立ち気持ちがいい。
「えい」
ぴょん、ぴょん。ドボン。
アナベルは徐ろに、近くにあった小石を握ると水面に向かって投げる。しかし残念ながら、二つしか飛ばなかった。
ぴしょん、ピション、ぴしょん、ぴしょん、ドボン。
すると横から、綺麗に石が水面を飛んでいく。隣のポーラが不敵に笑っている。
アナベルは再び石を投げれば、今度は三回水面を跳ねる。
火花を散らす二人を真似て、イーサンも石を滑らせようとする。も、投げた石は水面に沈んでいく。彼は黙ってジャックの隣に座り、目の前で散る火花の鑑賞をすることにした。
「どうやら対決しなければならないようね」
「まだまだ若いもんには負けませんよ?」
無いはずのコングが鳴る音が、イーサンとジャックの耳に聞こえてきた。
水面を跳ねる音、石が弾く音、沈んでいく音…。二人の対決は十ラウンドも行われた。最高七回までは石を跳ねさせたアナベルは奮闘したが、ポーラの九回には届かなかった。
「ふほほほほほほほほほほほほ」
魔女そのものの高笑い。若干邪悪に染まっているのは、陽射しの影による印象操作だろう。そうに違いない。
アナベルは悔しさに頬を風船のように膨らませる。ポーラが頬を優しく突けば、ぷうと空気が抜けていく。
激しい対決であった。女性陣はうっすら汗が滲んでいる。ジャックに渡された冷やしたタオルを首元に当てれば、じんわりと熱が冷えていく気持ちよさがあった。
二人の健闘に、男性陣は拍手を送る。
「他には、こんなものでも遊んでいましたよ?」
そう言って老婆が取り出したのは、玩具の水鉄砲であった。竹で作られたそれは、大きな水タンクが付いており銃口が長い。アナベルもイーサンも戦慄した。
「絶対昔にはないでしょう!」
「改良しました」
「ポーラ?!」
「川で何年遊んでいると?先を読んでおもちゃを用意しておくもんですよ!」
今度は悪王がごとく水鉄砲を使い、容赦なくアナベルたちに水をかけ始める。
負けるわけにはいかない! 反撃の時だ! イーサンもアナベルも彼女に水をかけようと、水面を掬う。
そのまま水掛け遊びへと発展した。
「見事にずぶ濡れですな」
奮闘に奮闘。すっかり頭からつま先までびしょびしょになった。
全員が濡れるわけにはいかないと、体に鞭打ち全力で逃げ回り被害の少ないジャックが渡してくれた柔らかなタオルで体を吹けばやけに温かく感じ、温かい飲み物を用意してくれた。
「ん〜! おいしい」
「はぁ……甘酸っぱいスープがいいね」
湯気の立つカップに口をつければ、具もたっぷり入っており、トマトスープが体に染みる。
敷地内の更衣室を借り、順番に着替えを済ませた。
刺激を受けたイーサンは、もう少し石投げに挑戦することにした。練習を重ね、アナベルとポーラからコツを教えてもらい、なんとか三回まで飛ぶようになった。喜びのあまり、イーサンはその場で大きくジャンプした。
四人は川辺を散策しながら、パークの奥にある小滝を眺めたり、周囲の植物を観察する。最後はアナベルとイーサンは小舟を借りて川の上を漂っていた。
夕陽が水面に溶けていく様子を、涼しい風を浴びながら静かに眺めた。
✴︎
「これは随分水遊びしましたねぇ」
サイドハウス・ノアに帰れば、パサパサになった髪に絶句したヨンジャとイシカワに早速浴室へと通されたアナベルとイーサン。洗料と油で髪で、いつも以上に念入りに手入れされた。アナベルは洗ってもらいながら今日の出来事を話せば、至極楽しかったことが通じたようで彼女たちも笑顔で話を聞いていた。
夕食で、釣った魚を写した証しを広げれば、レティシアもデービッドも数の多さと大きさに驚いた。
手振りも合わせた土産話は、ひどく愉快なひと時が送れたのが伝わった。
笑い合う子供たちに、大人たちも表情を緩ませて話に聞き入る。
今日の出来事も振り返り楽しみながら、夜は更けていった。
魚が乱獲されないよう、釣りをしたい場合は許可を取らなければいけない法律になっており、アスレチックパークでの漁業権が昨日ようやく取れたのだ。ポーラに頼んで事前に予約申請を入れていたにも関わらず、である。夏に人が集まりやすい保養地区とは言え、どれほど人気か察していただけるだろう。
そんな訳で。アナベルとイーサンは、ポーラとジャックと共に、屋敷近くのアスレチックパークへ川遊びに来た。ウォーターエリアは名前の通り。大地を駆け木々の遊具で作り上げたアスレチックエリアに対し、池や河を主役に船遊びや魚釣り、河原ではバーベキューも楽しめる。
まずは念願の釣りを楽しむ。靴を川用に変え、川の流れに流されないように浮袋も身につけたアナベルとイーサン、ポーラはさぶんと足を浸しながら釣り糸を垂らす。ジャックはのんびり椅子に腰掛け、三人を見守っている。
一ヶ月前に初めて釣りをやったアナベルであったが、今日はコツを掴み、ひょいと魚を釣っていく。小さな魚はリターンして、大きな魚を狙う。
イーサンが一匹、アナベルとポーラが三匹ずつと結構な数がとれた。
連れた記念を残すために魚拓を取ってから、七匹をジャックが手際よく血を抜き、内臓を取る。人数分の串を刺して姿焼き、三匹は衣をまとわせ油で揚げ、香味野菜で炒めた。
「ばあさん、骨には気をつけなさいよ。若いお2人さんも負けじと食いなさい」
そのまま焼いた魚はふっくらした身に、パリパリと少し苦味のある皮が美味しい。塩を振り、醤油や柑橘酢をかけて食べれば味が変わった。
香味野菜で炒められた魚は唐揚げのような食感だ。しゃきしゃきとした野菜の食感と合わさるのも、ジャックが持ってきてくれたパンに挟んで食べても、非常に美味しい。
すでに頬いっぱいに張っていたアナベルとイーサンは、何度も頷きながら夢中になって魚を堪能した。
食事を摂った後は、魚のいない場所へ移り水と戯れる。川辺で裸足になって、恐る恐る水に足をつければ芯まで冷えそうなほど冷たかった。暑い日差しを浴びながらでは、その対比が強く涼しさが際立ち気持ちがいい。
「えい」
ぴょん、ぴょん。ドボン。
アナベルは徐ろに、近くにあった小石を握ると水面に向かって投げる。しかし残念ながら、二つしか飛ばなかった。
ぴしょん、ピション、ぴしょん、ぴしょん、ドボン。
すると横から、綺麗に石が水面を飛んでいく。隣のポーラが不敵に笑っている。
アナベルは再び石を投げれば、今度は三回水面を跳ねる。
火花を散らす二人を真似て、イーサンも石を滑らせようとする。も、投げた石は水面に沈んでいく。彼は黙ってジャックの隣に座り、目の前で散る火花の鑑賞をすることにした。
「どうやら対決しなければならないようね」
「まだまだ若いもんには負けませんよ?」
無いはずのコングが鳴る音が、イーサンとジャックの耳に聞こえてきた。
水面を跳ねる音、石が弾く音、沈んでいく音…。二人の対決は十ラウンドも行われた。最高七回までは石を跳ねさせたアナベルは奮闘したが、ポーラの九回には届かなかった。
「ふほほほほほほほほほほほほ」
魔女そのものの高笑い。若干邪悪に染まっているのは、陽射しの影による印象操作だろう。そうに違いない。
アナベルは悔しさに頬を風船のように膨らませる。ポーラが頬を優しく突けば、ぷうと空気が抜けていく。
激しい対決であった。女性陣はうっすら汗が滲んでいる。ジャックに渡された冷やしたタオルを首元に当てれば、じんわりと熱が冷えていく気持ちよさがあった。
二人の健闘に、男性陣は拍手を送る。
「他には、こんなものでも遊んでいましたよ?」
そう言って老婆が取り出したのは、玩具の水鉄砲であった。竹で作られたそれは、大きな水タンクが付いており銃口が長い。アナベルもイーサンも戦慄した。
「絶対昔にはないでしょう!」
「改良しました」
「ポーラ?!」
「川で何年遊んでいると?先を読んでおもちゃを用意しておくもんですよ!」
今度は悪王がごとく水鉄砲を使い、容赦なくアナベルたちに水をかけ始める。
負けるわけにはいかない! 反撃の時だ! イーサンもアナベルも彼女に水をかけようと、水面を掬う。
そのまま水掛け遊びへと発展した。
「見事にずぶ濡れですな」
奮闘に奮闘。すっかり頭からつま先までびしょびしょになった。
全員が濡れるわけにはいかないと、体に鞭打ち全力で逃げ回り被害の少ないジャックが渡してくれた柔らかなタオルで体を吹けばやけに温かく感じ、温かい飲み物を用意してくれた。
「ん〜! おいしい」
「はぁ……甘酸っぱいスープがいいね」
湯気の立つカップに口をつければ、具もたっぷり入っており、トマトスープが体に染みる。
敷地内の更衣室を借り、順番に着替えを済ませた。
刺激を受けたイーサンは、もう少し石投げに挑戦することにした。練習を重ね、アナベルとポーラからコツを教えてもらい、なんとか三回まで飛ぶようになった。喜びのあまり、イーサンはその場で大きくジャンプした。
四人は川辺を散策しながら、パークの奥にある小滝を眺めたり、周囲の植物を観察する。最後はアナベルとイーサンは小舟を借りて川の上を漂っていた。
夕陽が水面に溶けていく様子を、涼しい風を浴びながら静かに眺めた。
✴︎
「これは随分水遊びしましたねぇ」
サイドハウス・ノアに帰れば、パサパサになった髪に絶句したヨンジャとイシカワに早速浴室へと通されたアナベルとイーサン。洗料と油で髪で、いつも以上に念入りに手入れされた。アナベルは洗ってもらいながら今日の出来事を話せば、至極楽しかったことが通じたようで彼女たちも笑顔で話を聞いていた。
夕食で、釣った魚を写した証しを広げれば、レティシアもデービッドも数の多さと大きさに驚いた。
手振りも合わせた土産話は、ひどく愉快なひと時が送れたのが伝わった。
笑い合う子供たちに、大人たちも表情を緩ませて話に聞き入る。
今日の出来事も振り返り楽しみながら、夜は更けていった。

