私の姉たちはアイドルなんです!!



これは私たちがまだ中学2年生のころ。

みんな…春お姉ちゃん、夏お姉ちゃん、秋お姉ちゃん、冬お姉ちゃん、私で町中を歩いていた。


「でねー」

「えーっ!そんなことあるのっ!?」


私たちは五つ子だから、いやでも視線を感じる。

けど、生まれてからずっとこうだから慣れちゃった。


「ねえここ、はいらない?」

「いいよぉ〜」

「もちろんです」


その時だ。



「ねえ君たち!」


だ、誰…?

誰か知らないおじさんがいた。


「は、はい…」

「五つ子だよね!?」


に、苦手なタイプかも…

こ、怖い…


すると、春お姉ちゃんが私の様子に気づいた。


私の前にバッ!!、とでると、そのおじさんをギロッと睨んだ。


「はい。そうですが何か?」

「僕、こんな者なんだけど、アイドルやるつもりとかない?」


ピッと名刺をさしだしたおじさん。

そこには中村 健(なかむら けん)とかいてあった。


アイ、ドル…??

「「「「「…え?」」」」」


私たち5人の声がそろった。


「アイ、ドル…?」

春お姉ちゃんはぽかーんとしている。

「あっ、アイドルっ!?」

夏お姉ちゃんはなんだかうれしそう。

「えぇ?アイドルぅ?」

秋お姉ちゃんは聞き返している。

「アイドルですか…」

冬お姉ちゃんはなにかを考えているみたい。

一方私は。


胸の奥に熱い、苦い思いがじわっ…とひろがっていた。

やばい、かも。


いやだいやだいやだ。

お姉ちゃんたちに、しかもこんなまちなかで…
八つ当たりしちゃうなんて。


そんな思いは私の脳には届かなかったみたいで。


「お姉ちゃんたちがやるならまだしも、私は絶対しないから!!私はもとは生まれないはずだったんだからね!!」

大声でそう叫んだ。


「四季…」

春お姉ちゃんはそう困ったようにつぶやく。

…しまった。困らせちゃった。

なんで、言っちゃったんだろう。

実は私たちのママとパパは1年前に死んじゃったの。

事故で。

生きていくためにはお金が必要。

確かに大人気アイドルとかになればお金だってもらえる。

けど、私がやるのは違うのと思う。


頭が熱くなって、クラクラして、なんにも考えられない。


「四季っ!まだやるって決まったわけじゃないんだしっ!ねっ?」

夏お姉ちゃんがそう励ましてくれるけど、なんだかモヤモヤした気持ちを吐き出さずにはいられなかった。


「私はお姉ちゃんたちとは違うの!!簡単に大丈夫なんて言わないで!!ママとパパだって、大丈夫って言ってたのに大丈夫じゃなかったじゃんか!!!アイドルやりたいならやればいいじゃん!!そしたらお金だってもらえるよっ!?」


そこまで一気に言葉を吐き出すと、私は大声で泣き出した。

私って馬鹿だなぁ。

なんで素直に『行かないで、おいてかないで』って言えないんだろう。


「「「「中村さん。私たち、アイドルやります」」」」


あぁ。私の想いは…

私の『行かないで』って気持ちは伝わらなかったんだ。


前々からみえていたお姉ちゃんたちと私の境界線がくっきりみえるようになった気がした。


そうして、シーズンができた。