BLUE YELL ―その声が届くまで―

 そして翌日。

 私はいつものようにレッスンを終え、トレーニングルームへ向かった。

 扉を開ける。

「……あれ?」

 誰もいない。

 いつもなら、もう来ている時間なのに。

 私は少しだけ不思議に思いながら、荷物を置いた。

 別に。

 何でもない。

 そう思っているのに。

 なぜか、何度も時計を見てしまう。

 しばらくして。

 ガチャ。

 扉が開いた。

「……あ。」

 黒瀬さんだった。

「こんにちは。」

「……こんにちは。」

 いつも通りの短いやり取り。

 黒瀬さんはそのまま荷物を置き、トレーニングを始める。

 私は何も言わず、自分のストレッチに戻った。

 でも。

 さっきまで気になっていた時間のことが、急にどうでもよくなった。

 ……なんだろう。

 別に、待っていたわけじゃない。

 ただ。

 いつもいる人がいなかったから、気になっただけ。

 そう自分に言い聞かせる。

 なのに。

 少しだけ、安心してしまった。