BLUE YELL ―その声が届くまで―


 気にしないように、私はトレーニングを続ける。

 今度は体幹を鍛えるため、マットの上で身体を支えた。

「……っ。」

 思ったよりもきつい。

 数日間のレッスンで、身体には疲れが溜まっていた。

 それでも、もう少しだけ。

 そう思っていると、

「今日はもうやめたら?」

 また声がした。

「え?」

「疲れてるだろ。」

「まだ大丈夫です。」

「顔に出てる。」

「……出てません。」

「出てる。」

 即答。

 私は思わず顔を上げた。

「黒瀬さんって……。」

「何。」

「結構、失礼ですよね。」

 一瞬、沈黙が落ちた。

 湊は少しだけ目を細める。

「そうか?」

「そうです。」

「悪かった。」

 思っていたより素直に謝られて、逆に困る。

「……いえ。」

 私は視線を逸らした。

 すると湊が荷物をまとめ始めた。

「俺、帰る。」

「あ、はい。」

「戸締まり、スタッフに確認してから出て。」

「分かってます。」

「ならいい。」

 そう言って、湊はトレーニングルームを出ていった。

 扉が閉まる。

 再び静寂が戻ってくる。

「……なんなの。」

 思わず呟いた。

 口数が少ないくせに、妙に気になることばかり言ってくる。

 でも。

 ふと、さっきの言葉を思い出す。

 ――今日はもうやめたら?

 ――疲れてるだろ。

 ……もしかして。

 心配してくれた?

「いやいや。」

 私はすぐに首を振った。

 そんなわけない。

 ただ、キャプテンとしてチームのメンバーを気にしているだけ。

 きっと、それだけだ。

 そう思いながら、私はもう一度マットに手をついた。

 でも。

 さっきまでより、少しだけ身体が軽くなった気がした。