BLUE YELL ―その声が届くまで―



 それだけだった。

「あ、はい……。」

 会話、終了。

 ……短い。

 私はなんとなく気まずくなり、再びマットへ戻った。

 湊も何も言わず、別の器具へ向かう。

 静かなトレーニングルームに、機械の音だけが響く。

 私は気にしないように、トレーニングを続けた。

 片足で身体を支えながら、ゆっくりと体重を移動させる。

 すると。

「それ、やめた方がいい。」

「……え?」

 振り返る。

 湊がこちらを見ていた。

「今のやつ。」

「どうしてですか?」

「膝に負担かかってる。」

 私は自分の膝を見る。

「でも、これくらいなら大丈夫です。」

「そうか?」

「はい。」

「……ならいいけど。」

 湊はそれ以上言わず、トレーニングへ戻った。

 私は少しだけムッとしながら、再び身体を動かす。

 すると、また声が飛んできた。

「動き、独特だな。」

「……独特?」

「普通のトレーニングと違う。」

「ああ……。」

 私は少し考えてから答えた。

「昔、チアをやっていたので。」

「チア?」

「はい。競技チアです。」

 湊が少しだけこちらを見る。

「何かスポーツやってたのかと思った。」

「チアもスポーツですよ。」

 思わず言い返してしまった。

 湊は一瞬黙って、

「……そうだな。」

 それだけ言った。

 なんとなく納得していないような顔だった。

 私は小さく息を吐いて、また前を向く。

 やっぱり。

 この人とは、あまり気が合わない気がする。

 まだまともに話したのは数分なのに。

 そんな予感だけは、なぜかはっきりしていた。