それから、数日が過ぎた。
レッスンは想像していたよりも厳しかった。
基礎練習から始まり、振り入れ、フォーメーション、表情、声の出し方。
競技チアとは違うことばかりで、私は毎日必死だった。
「凪、そこもう少し力抜いて!」
「はい!」
「ひより、もう一回!」
「はい!」
「朱莉、笑いすぎ!」
「えー!?」
そんなやり取りを繰り返しながら、少しずつ三人で過ごす時間も増えていった。
ひよりはダンスの振り覚えが早く、難しい動きもすぐに自分のものにしてしまう。
朱莉は、とにかくチームのことをよく知っていた。
「この曲、去年のホーム最終戦でも使ってたよ!」
「この選手、実は左利きなんだよ!」
聞けば聞くほど、私の知らないことばかりだった。
そして、もう一つ分かったことがある。
チアと選手が一緒に練習する時間は、思っていたよりずっと少ない。
レッスンは基本的にチアだけ。
試合の日も、選手とは別々に動くことが多い。
あれ以来、黒瀬湊にも会っていなかった。
チームに入ったのだから、いつか会うだろう。
そう思っていたけれど、なかなかその機会はなかった。
そんなある日のレッスン終わり。
「今日はここまで!」
RIOさんの声が響く。
「お疲れさまでした!」
「お疲れさまでした!」
メンバーが一斉に片付けを始める。
私も荷物をまとめながら、鏡を見る。
まだまだだ。
身体の使い方も、目線も。
競技チアの癖が抜けきっていない。
「私、少し残って練習して帰ります。」
そうRIOさんに伝えると、
「分かった。無理しないでね。」
「はい。」
ひよりと朱莉も帰り支度を終える。
「じゃあ、また明日ね!」
「また明日。」
二人を見送って、私は一人になった。
スタジオに残って練習しようかと思ったけれど、今日は身体の調整もしたかった。
私は荷物を持って、トレーニングルームへ向かった。
扉を開ける。
中には誰もいなかった。
「よし……。」
小さく呟いて、ストレッチマットの上に座る。
まずは身体をゆっくり伸ばしていく。
股関節。
膝。
足首。
それから体幹。
昔の怪我をした場所に意識を向けながら、無理のない範囲で身体を動かしていく。
今は痛みもない。
だけど、以前のように何も考えず身体を動かすことは、まだ怖かった。
少しずつ。
焦らずに。
そう自分に言い聞かせながら、トレーニングを続けていた。
しばらくして。
ガチャ。
扉が開いた。
「……あ。」
思わず声が漏れる。
入ってきたのは、黒瀬湊だった。
湊も私を見ると、少しだけ目を止めた。
私は慌てて立ち上がる。
「あの……。」
初めて、ちゃんと話す。
「先日、オーディションに合格して入った朝比奈凪です。」
少し緊張しながら頭を下げる。
「これからよろしくお願いします。」
湊は一瞬だけ私を見た。
「……黒瀬湊です。」
そして、
「よろしく。」
レッスンは想像していたよりも厳しかった。
基礎練習から始まり、振り入れ、フォーメーション、表情、声の出し方。
競技チアとは違うことばかりで、私は毎日必死だった。
「凪、そこもう少し力抜いて!」
「はい!」
「ひより、もう一回!」
「はい!」
「朱莉、笑いすぎ!」
「えー!?」
そんなやり取りを繰り返しながら、少しずつ三人で過ごす時間も増えていった。
ひよりはダンスの振り覚えが早く、難しい動きもすぐに自分のものにしてしまう。
朱莉は、とにかくチームのことをよく知っていた。
「この曲、去年のホーム最終戦でも使ってたよ!」
「この選手、実は左利きなんだよ!」
聞けば聞くほど、私の知らないことばかりだった。
そして、もう一つ分かったことがある。
チアと選手が一緒に練習する時間は、思っていたよりずっと少ない。
レッスンは基本的にチアだけ。
試合の日も、選手とは別々に動くことが多い。
あれ以来、黒瀬湊にも会っていなかった。
チームに入ったのだから、いつか会うだろう。
そう思っていたけれど、なかなかその機会はなかった。
そんなある日のレッスン終わり。
「今日はここまで!」
RIOさんの声が響く。
「お疲れさまでした!」
「お疲れさまでした!」
メンバーが一斉に片付けを始める。
私も荷物をまとめながら、鏡を見る。
まだまだだ。
身体の使い方も、目線も。
競技チアの癖が抜けきっていない。
「私、少し残って練習して帰ります。」
そうRIOさんに伝えると、
「分かった。無理しないでね。」
「はい。」
ひよりと朱莉も帰り支度を終える。
「じゃあ、また明日ね!」
「また明日。」
二人を見送って、私は一人になった。
スタジオに残って練習しようかと思ったけれど、今日は身体の調整もしたかった。
私は荷物を持って、トレーニングルームへ向かった。
扉を開ける。
中には誰もいなかった。
「よし……。」
小さく呟いて、ストレッチマットの上に座る。
まずは身体をゆっくり伸ばしていく。
股関節。
膝。
足首。
それから体幹。
昔の怪我をした場所に意識を向けながら、無理のない範囲で身体を動かしていく。
今は痛みもない。
だけど、以前のように何も考えず身体を動かすことは、まだ怖かった。
少しずつ。
焦らずに。
そう自分に言い聞かせながら、トレーニングを続けていた。
しばらくして。
ガチャ。
扉が開いた。
「……あ。」
思わず声が漏れる。
入ってきたのは、黒瀬湊だった。
湊も私を見ると、少しだけ目を止めた。
私は慌てて立ち上がる。
「あの……。」
初めて、ちゃんと話す。
「先日、オーディションに合格して入った朝比奈凪です。」
少し緊張しながら頭を下げる。
「これからよろしくお願いします。」
湊は一瞬だけ私を見た。
「……黒瀬湊です。」
そして、
「よろしく。」


