「でもね。」
RIOさんは少しだけ前のめりになった。
「だからこそ、期待してる。」
「え……?」
「競技チアを知ってる人だから見えるものって、きっとあると思うの。」
私は思わず美咲先輩を見る。
美咲先輩は静かに頷いた。
「大学の頃、凪が考えた振り付け。」
「私、今でも覚えてる。」
「フォーメーションも、見せ方も、すごく凪らしかった。」
「もちろん、競技チアとスポーツチアは違う。」
「だから今すぐ振り付けをお願いするつもりはないよ。」
美咲先輩は柔らかく笑う。
「まずはチームのことを知って。」
「選手のことを知って。」
「ノースレイヴンズらしい応援って何なのか、一緒に考えてほしい。」
RIOさんも頷く。
「私一人じゃ、どうしても考え方が偏ることがあるの。」
「だから、新しい視点が欲しい。」
「凪のアイデアを聞かせてもらえたら嬉しい。」
私は言葉を失った。
振り付けなんて。
競技チアの演技なら何度も考えてきた。
でも、応援するチアなんて一度も経験したことがない。
「……私に、できるでしょうか。」
不安が、そのまま口をついて出る。
すると美咲先輩は、昔と変わらない優しい笑顔で言った。
「一人で考えなくていい。」
「RIOもいる。」
「私も産休に入るまでは一緒に考える。」
「だから、少しずつでいい。」
RIOさんも笑う。
「まずは、このチームを好きになるところから始めよう。」
その一言が、不思議と胸に残った。
――このチームを好きになる。
その時の私は、まだその意味をよく分かっていなかった。


