すべての審査が終わり、私たちは控室へ戻ってきた。
張り詰めていた緊張が解けたのか、椅子へ腰を下ろした途端、大きく息を吐く人もいる。
鏡の前で髪を整える人。
ペットボトルの水を一気に飲み干す人。
誰もが、それぞれの時間を過ごしていた。
私は胸元からゼッケンを外し、静かにバッグへしまう。
(終わった。)
やれることは、全部やった。
それでも結果は分からない。
静かな時間だけが、ゆっくりと流れていく。
コンコン。
控室の扉がノックされた。
さっきまで案内をしていたスタッフが部屋へ入ってくる。
「皆さん、お疲れさまでした。」
自然と部屋の空気が張り詰める。
「これより、合格者を発表します。」
誰も言葉を発しない。
ただ、スタッフの口元だけを見つめていた。
「エントリーナンバー3番。」
一人の女性が、小さく「はい」と返事をする。
「8番。」
少し離れた場所から返事が聞こえた。
私は無意識に膝の上で手を握り締める。
(やっぱり……。)
そんな思いが胸をよぎった、その時だった。
「12番。」
一瞬、時間が止まる。
「……はい。」
自分の声とは思えないほど、小さな返事だった。
受かった。
その事実が、まだうまく頭の中で繋がらない。
「以上、3名の方は別室へご案内します。」
スタッフの言葉に立ち上がる。
周りを見ると、悔しそうに俯く人。
涙をこらえて笑顔を作る人。
静かに荷物をまとめる人。
さっきまで同じ目標へ向かっていた仲間たちの姿があった。
胸が少しだけ苦しくなる。
私は小さく一礼し、控室をあとにした。
別室の扉の前で深く息を吸う。
ここからが、本当のスタートなのかもしれない。
そう思いながら、私はゆっくりと扉を開けた。


