案内された先は、ホームアリーナのメインコートだった。
参加者たちが横一列に並ぶ。
「それでは、これよりオーディションを開始します。」
コート正面には長机が並び、その向こうには三人の審査員が座っていた。
チアディレクター。
球団スタッフ。
そして現役チアキャプテン。
三人とも資料へ目を落としながら、ときおり参加者へ視線を向けている。
「まずは振り入れ審査を行います。」
「本日使用する振りは、このあと担当インストラクターよりレクチャーします。限られた時間の中で覚えていただき、その後グループごとに審査へ進みます。」
その説明に、参加者たちの表情が一斉に引き締まった。
その時だった。
「きゃー!」
後方から小さな歓声が上がる。
視線を向けると、一人の女性がコートへ歩いてくる。
長い髪を高い位置で結び、ノースレイヴンズの練習着に身を包んだその人は、歩くだけで周りの空気が変わるような存在感があった。
「RIOさんだ……!」
「去年のオールスターにも出てたよね!」
「生で見られるなんて嬉しい!」
周りの参加者たちが興奮した様子で声を弾ませる。
私は一人だけ、その会話についていけなかった。
(……そんなに有名な人なんだ。)
競技チアしか知らなかった私には、その名前も、その実績も分からない。
そんな私をよそに、女性は参加者全員を見渡し、明るく笑った。
「おはようございます!」
「今日はオーディションに来てくださってありがとうございます!」
よく通る声が体育館いっぱいに響く。
「私はノースレイヴンズチアリーダーのRIOです。今日は私が振り入れを担当します!」
大きな拍手が起こる。
RIOさんは手を合わせて照れくさそうに笑うと、すぐに表情を切り替えた。
「時間は二十分。」
「短いと思います。」
「でも、実際の活動でも短時間で振りを覚える場面はたくさんあります。」
「完璧じゃなくて大丈夫。」
「大切なのは、覚える力と表現する力。」
「そして、楽しむこと!」
最後の一言に、自然と体育館の空気が柔らかくなる。
「それでは始めます!」
音楽が流れ始めた。
RIOさんの動きを、一つも見逃さないように目で追う。
右、左、ターン。
腕の高さ。
足の向き。
カウントを頭の中で刻みながら、一つひとつの動きを身体へ落とし込んでいく。
久しぶりなのに、不思議と身体は覚えていた。
動きがつながっていく感覚。
音に乗る楽しさ。
胸の奥で眠っていた何かが、少しずつ目を覚ましていくようだった。


