BLUE YELL ―その声が届くまで―


 公開練習から一週間。

 私は再び、東京ノースレイヴンズのホームアリーナを訪れていた。

 前回来た時とは違う。

 今日は、見学ではない。

 挑戦する側だ。

 受付を済ませると、スタッフからゼッケンを受け取る。

「エントリーナンバー、12番です。」

「ありがとうございます。」

 小さく頭を下げ、胸へゼッケンを付ける。

 控室の扉を開けると、すでに多くの参加者が集まっていた。

 鏡の前でストレッチをする人。

 イヤホンを耳に付け、音楽を聴いている人。

 誰かと楽しそうに話している人。

 年齢も雰囲気も様々だったが、一つだけ共通していることがある。

 みんな、自信に満ちた表情をしていた。

(……すごい。)

 思わず息をのむ。

 競技チアの大会とはまた違う空気。

 技術だけじゃない。

 笑顔も、表現も、人を惹きつける華やかさも求められる世界。

 私は静かに深呼吸をした。

 緊張しないと言ったら、嘘になる。

「おはようございます。」

 控室に美咲先輩が入ってきた。

 参加者たちへ向けて笑顔で挨拶をする。

「今日はオーディションに参加してくださってありがとうございます。」

「皆さんが緊張していることは分かっています。」

「でも今日は、上手く踊ろうとしなくて大丈夫。」

 控室が静まり返る。

「このチームが見たいのは、皆さんらしさです。」

 私は思わず顔を上げた。

「ダンスが上手な人は、たくさんいます。」

「でも、一人として同じチアリーダーはいません。」

「だから今日は、自分らしく楽しんでください。」

 その言葉に、不思議と肩の力が抜けていく。

 美咲先輩は私を特別扱いすることなく、参加者全員へ向けて一礼した。

「それでは、始めましょう。」

 スタッフの声とともに、参加者たちが立ち上がる。

 いよいよだ。

 私は胸の前でぎゅっと拳を握り、小さく息を吸った。

 もう一度だけ。

 もう一度だけ、大好きなチアに挑戦したい。

 その想いだけを胸に、私は一歩前へ踏み出した。