BLUE YELL ―その声が届くまで―

なぜか、その背中から目が離せなかった。

「どうだった?」

 いつの間にか隣へ来ていた美咲先輩が、小さく笑う。

 私はガラス越しのコートから視線を戻した。

「……競技チアとは、全然違いました。」

「うん。」

「でも。」

 言葉を探す。

「チアも、選手も。」

「みんな、同じ方向を向いてるんですね。」

 その一言に、美咲先輩は嬉しそうに目を細めた。

「そう。」

「それが、このチームの一番好きなところ。」

 私はもう一度コートへ目を向ける。

 さっきまで練習していた選手たちは、互いに声を掛け合いながら片付けを始めていた。

 チアメンバーも笑顔で反省点を話し合っている。

 勝つために努力する選手。

 その背中を支えるチア。

 競技は違っても、目指す場所は同じなのかもしれない。

 胸の奥で、何かが静かに動き出す。

「美咲先輩。」

「うん?」

 私はゆっくりと息を吸った。

「……オーディション、受けてみます。」

 一瞬だけ目を丸くした美咲先輩は、すぐにいつもの優しい笑顔を浮かべた。

「うん。」

「待ってた。」

 その一言に、思わず笑ってしまう。

 不安は消えていない。

 怖さだって、まだある。

 それでも。

 もう一度だけ、自分の”好き”を信じてみたいと思った。

 新しい一歩を踏み出すには、十分すぎる一日だった。