BLUE YELL ―その声が届くまで―



 バンッ。

 乾いた音が体育館に響く。

 続けて、

 バンッ。

 一定のリズムで床を叩くボールの音。

 吸い寄せられるように視線を向けると、ガラス越しにバスケットコートが見えた。

 広いコートを駆け回る選手たち。

 響くシューズのきしむ音。

 飛び交う掛け声。

 テレビでしか見たことのなかった世界が、目の前に広がっていた。

 その中で、一人だけ目を引く選手がいた。

 シュートを放つ。

 外れれば、自分でボールを拾いに走る。

 もう一度構え、また放つ。

 その繰り返し。

 黙々と。

 ただ、ひたすらに。

 周りの選手たちが次のメニューへ移っても、その人だけは最後の一本にこだわり続けていた。

「集合!」

 コートに監督の声が響く。

 選手たちが次々と集まっていく。

 それでも、その人はもう一本だけシュートを放った。

 リングをきれいにくぐり抜けたボールを見届けると、小さく息を吐き、ようやく歩き出す。

「黒瀬! 終わりだ!」

 監督が苦笑しながら声をかける。

「はい。」

 短く返事をすると、ボールを抱えて輪の中へ向かった。

「湊、お前また最後まで打ってたのか。」

 近くにいた選手が笑いながら肩を小突く。

「一本入るまで終われなかっただけ。」

「相変わらず真面目だな。」

 周りが笑う。

 けれど、本人は少し照れくさそうに笑っただけだった。

 ――黒瀬、湊。

 私は心の中で、その名前をそっと繰り返す。

 どんな人なのかは、まだ分からない。

 それでも。

 なぜか、その背中から目が離せなかった。