余所者-よそもの-は、テーマを[救済]と置いた上で執筆をしました。
もともとは「なんかヤベー街を舞台にしたヤンキーもの」を書こうとして、舞台設定からキャラクターを組み立てたのですが。
終わりの街に暮らす住人たちを考えていく中で、「こいつら……みんな助けたい」と。
ジャンルは恋愛ものだけど、主人公やヒーローの誰か一人がみんなを救う物語よりも。
相互に助け合うような。巡り巡ってあれ?この子ちょっと幸せになった?みたいな。
そんな、ちょっとした人間ドラマが書けたらいいなぁと少しずつ物語に色をつけていきました。
救済っていっても、ヤバいヤツが正しい人間になるとか、過去の行いを許されるとか、そんな大それたものじゃなく。
ただ、馬鹿みたいにくだらないことで笑いながら、また明日を生きていけること。
なにせ、糸冬町はとにかく治安が悪い。笑
シドの言葉を借りて言うと、
『社会に馴染めず、行き場を失った人間たち』『それでも、居場所を求めた奴らが、最後に流れ着く街』ですね。
住人たちもそれぞれに事情を抱えながら、この街を選び、暮らしています。
そんな世界に飛び込んだ主人公、カナコ。
一見すると、どこにでもいそうな普通の女の子として描きました。
シトウの住人と暮らしていく中で、少しずつ、本人が自覚すらしていない心の深い傷が浮き彫りになっていく。
カナコという人物じゃなきゃ、あんな体当たり的に(笑)シトウの住人のいろんな心の傷に触れることはできなかったんじゃないかなぁと思っています。
シトウの住人も、自分の心の傷を隠すのが得意な人ばかりですから。
痛みを抱えた人間同士が交差して、お互いの痛みに触れあうことで愛の形が変わっていく。
そんな[疼痛愛]も、本作のモチーフの一つでした。
そして、タイトルにも据えている『余所者』。
とても排他的な言葉ではあります。
「お前には踏み込まない。だからお前も踏み込むな」
そんな互いの心に線を引くような言葉を、物語の入口に置きました。
その線引きから始まった関係が、少しずつ変わっていく。
『余所者か』
終わりの街で、始まった物語。
最後には、カナコにとって『どんな場所よりも希望に満ちた街』になりました。
さてさて、最後に。
少しこだわったプロローグとエピローグについて、触れたいと思います。
まずプロローグについて。
1巻~3巻まで、共通してこちらは誰の視点のプロローグかを明示していませんでしたが、物語を読み終わってからわかる構成にしています。
1巻:ユキ
2巻:千景
3巻:シド
ですね。
1巻と3巻のプロローグは、対になるように描いています。
同じ雪の日、同じ交差点でカナコを見つけたユキとシド。
1巻:ユキ
彼は、他人と深く関わることを避け、自分の感情にも制限をかけてきた人物です。
人間かどうかも怪しいと思うほど、まるで理解できない存在。
そんな女を、『目が、離せない』と思った。
ユキにとっての始まりは、他者に心を奪われたこと。
それがのちに彼の語る『怒ったり、泣いたり。嬉しいも、何もかも。どうしてだか……俺は、お前でしか感じられない』(3巻92話:静かな森の中で)に繋がるのかなと思います。
3巻:シド
一方で彼は、他人の人生を左右し、その責任や後悔を背負ってきた人物です。
過去に囚われて生きてきたシドは、カナコにカエデを重ね、やがて自分自身と向き合っていく。
3巻のプロローグは、そんな彼があの日を振り返る視点で描きました。
「やり直せる」と思った男が、最終的には「やり直せない過去」を受け入れていく。
だから、カナコを救おうとする行為には、彼女自身への思いだけでなく、自分が救われたいという欲求も混じっている。
ユキとシド。
同じ雪の日。
同じ交差点。
同じ女を見た。
けれど、そこに至るまでの道のりは、まるで違っていた。
ユキは、他人を遠ざけることで自分を守ってきた。
シドは、他人を縛りつけることで自分を守ってきた。
だからこそ、同じ場所から踏み出した一歩も、違う方向へ向かっていく。
ユキは、他人と生きることを知った。
シドは、他人を手放すことを知った。
続いて、エピローグについてです。
1巻のエピローグ[タカ]
2巻のエピローグ[カエデ]
1巻、2巻の区切りは、どちらも死者の視点で終わる物語でした。
そして、最終3巻のエピローグは[シド]
初めて、これからも生きていく人物の視点で締めくくりました。
タカの願った『もう一度、泣かせてぇな……』
カエデの願った『大好きな彼に笑ってほしかった』
3巻では、カナコがユキの前で涙を取り戻す。
シドはくだらないことで笑う。
1巻と2巻で残された願いがようやく叶う形になりました。
シドのエピローグは特に派手な出来事もなく、なんでもない日常の一コマです。
生きていくって、こういうことかなぁ……なんて、シドのこれから先続く人生の余白に期待を込めて、大切に描かせていただきました。
……と。
ノりノってここまでいろいろと書いてしまいましたが、、!
あくまで作者が込めた意図です。
読んでくださった皆さまがそれぞれに、何か少しでも感じてくださったなら、作者冥利に尽きます。
私はこう感じた!
私はこうだと思った!などなど。
もし感想を聞かせていただけたなら、泣いて喜びます。涙
余所者-よそもの-1巻、2巻、3巻と続いた、
終わりの街、糸冬町の物語。
この長い物語の中で、彼らを見つけてくださったこと。
そして、最後まで見届けてくださったこと。
心から、ありがとうございました。
2026.10.08 なつ美咲


