「多夜、捨てたのか?」
「……覚えてない」
カエデがアオイにやった一眼レフ。
外に出られないアイツが、自分の目の代わりに持たせていたものだった。
多分、アオイにとっては大切なもので。
長らくアオイの自由を縛ってきたものでもある。
一度雨に濡れたらしいそれは、すでに壊れていた。
多夜がゴミだと思って捨てた可能性は大いにある。
……あるいは。
もう、アオイが持っている必要はないとでも思ったか。
そこまでの感情がコイツにあるかは謎だが。
どっちにしても。
「全部段ボール開けりゃ、わかることだろうが」
面倒になった俺は、アオイをシカトして靴を脱いだ。
段ボールの隙間を縫い、部屋の奥へ進む。
後ろから、アオイと多夜もついてきた。
「ってかお前、どこ行ってた?」
「役所」
「こんな朝っぱらから?」
「お前知らねぇのか。役所は朝からやってる」
「知ってるよ!勝手に出るなよ。朝起きたらいなかったから心配した。電話くらい出ろ」
……マジうるせぇな、コイツ。
もうちょい多夜とモメさせときゃよかった。


