ユキはとても憂鬱げに「はあ……」と溜息を吐いた。
「こうやって、ずっとくっついていられたらいいのに」
「またすぐに会えるじゃないですか」
「さっきリンコが今日の仕事終わりAnBarで飲むぞって、集合かけてた」
「あ、そうなんですか?」
そうなると、飲み会に付き合うことになるので。
二人がマンションに帰るのは、いつもよりも遅くなる。
「……お前を独り占めしたいのに」
ユキはそう呟くと、お腹に回す腕にぎゅうっと力を込める。
首筋には、キスを落とした。
「………」
カナコの顔が、キュウウと赤くなる。
「の、野間くんが下で待ってますよ……」
「大丈夫。アイツの口癖は『僕は野暮じゃないんで』だ」
カナコは少し焦る。
このままだと、どんどん離れ辛くなる。
「待たせちゃ悪いですよ」
「わかってる」
ほどなくしてユキはカナコから離れ、「じゃあ、行ってくる」と背を向けて歩きだした。
「………」
カナコはその寂しげな背中を少しの間、見送っていた。
ふと、その目が大きくなる。
洗剤のついた手を急いで洗い流し、慌ててその背中を追った。
「ユキさん!」
「ん?」
振り返ったユキ。
カナコは飛び込むように、抱きついた。
「行ってらっしゃい」
そう言って、パッと顔を上げて。
グッと背伸びをして、ユキの頬にキスをした。


