目を閉じて。
ユキの匂いを、ゆっくりと吸い込む。
じわじわ溶ける、体温。
ユキの腕の中で、何度か呼吸を繰り返した。
吸って。
吐いて。
そのたびに、胸の奥に張りついていた緊張が、少しずつほどけていった。
「ユキさん……」
背中に手を回す。
触れたユキの肩甲骨が、ピクリと強張る。
次の瞬間には、さっきよりも強く抱きしめ返された。
視界が、ゆっくりと傾いていく。
ユキの腕に包まれたまま。
──背中が、柔らかなベッドに沈んだ。
見つめ合う、その顔が少し遠くに離れる。
ユキは身体を起こすと、私の右手を取った。
そこは。
さっきユキが、──『お前の優しさを思い出す』と言った場所。
手のひらの、傷。
ユキはそこに顔を埋めるように、柔らかな唇を押し付ける。
ちゅ、と小さな音がした。
垂れた前髪の隙間から見えるユキの瞳が、優しく細められる。
その顔が、ゆっくりと私の顔に下りてきて。
今度は、額に優しい口づけをした。
さっき、私が──『痛かった』と言った場所。
額の真ん中の、傷へ。


