余所者-よそもの-【 3 】



────……
──……


「ママ」

「………」

「ママ」

「……え?」

「それ、さっきからずっと同じの拭いてる」


私は、千景のその声に自分の手元を見た。

クロスと、すっかり乾いたグラス。


「どうかしたの?」


AnBarのカウンター。

隣に立つ千景が、心配そうに私の顔を覗き込んだ。


「ちょっとぼうっとしてただけ」

誤魔化すように笑って、グラスを棚に戻す。


千景は「そう?」と言って、ミネラルウォーターを持って二階へと上がった。


はあ、と重い溜息が口から零れた。


「………」

どうしよう。


──『……触らないでっ!!』


もう、あれから三日も経った。


あの時。
部屋が暗かったから、ユキがどんな顔をしていたのかはわからない。

ユキは一言も言い返さず、ベッドの上で背を向けて眠った。

私はなかなか眠れなくて、それでもお昼過ぎに目を覚ますと、ユキはもう黙って仕事に出かけてしまっていた。


それからは、ずっとすれ違い。

ユキは私よりも遅く帰り、私よりも早くに家を出て行く。

顔さえ合わせられていない。


きっと、怒ってるんだ。


ちゃんと……謝らなきゃ。