「それにしても賢い人だ。金の流れを見せただけで、街がどう回ってるか頭に入ったみたいだった」
「アイツ、地頭いーのよ」
「誰と深く付き合うか、誰を切るかの判断も早い。しかも交渉すりゃ、なんだかんだ最後は相手にイエスって言わせるし」
すると潤はニヤつく口を隠すように酒瓶に口をつけ、傾ける。
「ノマケンがコッチに残ってくれて、よかったよ」
「それは光栄です。僕はただ、今を楽しんでる」
ユキとの仕事は楽しい。
紫藤さんとはまた違った刺激がある。
「同じシトウなのに、まるで紫藤さんの頃とは違う世界だ」
いつか。
紫藤さんを『シトウの紫藤』という役割の檻から、どう逃がせばいいのか。
どうすれば、あの人を助けることができるのか、わからなかったとき。
ユキさんは、僕にこう言った。
──『俺は、紫藤の造った、この世界を壊す』
この言葉に、賭けた。
死ぬかもな、なんて思いながら、紫藤さんを裏切るような真似までして。
「……本当に、叶えてくれるだなんて」
生きていて、よかった。


