「今日もあくまで契約書で話を進めるつもりですか?」
「そうだよ」
「諦めません?あの女だけでも。もう脅し付けちゃいましょうよ」
殴っちまえ。
これまでの話し合いで、何度そう思ったかわからない。
あの女に関してだけは、紫藤の恐怖支配を見習えばいい。
従わないヤツは、地の果てまで追い詰める。
「駄目だ。一つでも例外を作れば、仕組みにした意味がない」
しかし、ユキは徹底してそれをやらない。
紫藤自身が、街の秩序だったあの頃とは違う。
ユキが作ろうとしているのは、自分がいなくても成立する秩序だ。
「まぁ。今日で仕留めるよ」
ユキの目から、すっと温度が消える。
そうして、女が経営する会員制ラウンジへと、足を踏み入れた。


