やがて二人は、シトウ東部の入口へと立った。
派手な電子看板があちこちで光る、シトウきっての風俗街。
「はあ……」
野間は大きなため息を吐く。
「行きますか」
今日はここ、シトウ東に拠点を置く女。
通称──『東の女帝』を口説きに来た。
彼女との話し合いは、今日で5回目にもなる。
「あの女、絶対ユキさんに惚れてるっすよね」
「そうなの?」
「それか、嬢のプライド?」
「………」
「何せ、契約どうこうより、ユキさんをオトすことしか考えてねぇっすよ」
「くだらない」
過去4回。
いずれも契約の話なんかロクにできなかった。
女の興味は、ユキ個人。
「今日こそ、まともな話し合いにしたいっすね」
面倒な相手。
放っておけるものなら放っておきたいくらいに。
ただ『東の女帝』は、シトウ東一帯の夜を仕切る女だ。
この女一人と話をつければ、傘下のキャバクラ、ラウンジ、風俗店。
それだけじゃない。
そこで働く女たちが利用する美容室、衣装屋、送迎、飲食店まで。
女の横の繋がりを伝って、その影響は一気に広がる。
東側の夜の店から得られる信用。
そこから周辺店舗へ波及する影響。
もろもろ込みで考えれば、多少苦労してでもこの女一人を説得することが、シトウ東をまとめる一番の近道だった。


