「ユキさん、おかえりなさい」
お風呂から上がって、一人ベッドに入った。
まもなく、ユキが帰ってきた。
灯りのない寝室。
「ただいま、かぁこ」
ギシ、とベッドが軋む。
布団の中に、ユキの温もりが加わる。
今夜も私の手を握って、そこにキスを落として。
抱き寄せて、抱きしめる。
そして、ふわ、と。
また。
知らない石鹸のニオイがした。
「シャワーは……」
「うん、大丈夫。浴びてきた」
なんてことのない、声。
なんてことのない、言葉。
ユキにとって。
きっと。
複数の女と関係を持つことは、普通。
好きって言葉を囁くことも、普通。
大切にすることも、普通。
「………」
私は、ユキの特別じゃない。
ユキの吐息が、顔に近づく。
けれど、その唇は、やっぱり私の唇を避けて。
首筋に、顔を埋めた。
他の女に触れたニオイを落とした。
その、不自然な香りを嗅がせてくるように。
「──……触らないでっ!!」
気がつけば。
そんな言葉が、私の口から飛び出していた。


