俯いたまま、シャワーをフックに掛けようとした。
思ったところに嵌らず、──ガタン、と落ちたシャワーヘッド。
水しぶきが、辺りに飛び散った。
くもっていた浴室の鏡。
水に濡れて、私の身体を映しだす。
「あ……」
鏡に映った自分の身体は、とても醜かった。
身体に刻み込まれた、たくさんの傷痕。
根性焼きに、切り傷。
出会ったばかりのころ。
ユキには、この身体を一度見られてる。
あの時、こう言ってたっけ。
──『古い痣から新しい痣。根性焼きに裂傷。女にしては、ずいぶんと気合の入った身体だな』
ユキが、どうして私にキス以上のことを求めないのか。
わかったかもしれない。
「……そりゃ、そうか」
どうせ抱くなら、綺麗な女がいい。
「こんなの、触りたくないよね」
ぺた、と鏡に触れた。
鏡越しに、自分の傷に触れた。
「………」
触れなければ、鏡はくもったまま。
私の身体を映さない。
私は、鏡に手を伸ばした。
傷痕のある場所を、きゅ、きゅ、と音を立てて擦った。
「消えないかな」
──消えてほしい。
「綺麗に、なりたい」
──ユキに、触れてほしい。
「消えて……消えてよ……」
なのに。
鏡に触れれば触れるほど。
醜い身体が、よく見える。
「………」
鏡を擦る指を止めた。
もう、見たくなかった。
「……いいなぁ。みんな」
羨ましい。
ユキに触れてもらえる人達が。
綺麗な身体を持っている人たちが。


