その日のユキの帰りは遅かった。
一緒に帰れないから、トウジの運転する車でマンションまで送ってもらって。
お風呂に入って、寝る用意をしていた。
ガチャ、と玄関のロックが外れる音に、玄関まで出迎える。
「ユキさん、おかえりなさい」
「ただいま、かぁこ」
ユキは玄関先で私を抱きしめた。
「………」
あれ。
いつもと違う香りが、鼻を掠める。
知らない……石鹸の香り。
いや、気のせいかな。
「疲れた。寝るか」
ユキはそう言って、廊下を歩く。
「シャワーは……?」
後ろからそう尋ねれば。
「浴びてきたから」
何食わぬ顔で言ってくる。
「え、外でシャワー浴びてきたんですか?」
「うん。だからもう眠れるよ」
え?どこで?
どうして?
「なんで。外で、シャワーを……」
「ん?」
「何か、その、汚れちゃった……とか?」
ユキは首を横に振った。
「ニオイがしたら、お前が嫌がるかと思って」
「………」
ニオイ?
「おいで、かぁこ」
「………」
「ベッドに行こう」
何の、ニオイ?
どうして、私が嫌がると思ったんだろう。
聞きたい。
でも。
なんだか、聞くのが怖かった。


