「言いたいことはわかるっす。んでも、紫藤さんから街に御触れは出ましたんで」
「御触れ?」
「『今日からなんかあったら瑞生に言え』って」
「それだけか」
「はい。なんで、あとは直々に挨拶回りしてもらえれば」
「挨拶回りっていうか。一から話し合いだろ、こんなの」
「まぁ、ワンチャン殴り合いも」
「………」
ユキは段ボールの上に書類を放った。
紫藤がいる。
ただそれだけで成立していた街。
その支配を、紙切れだけで引き継げるはずもない。
「やっとかぁこが帰ってきた」
「はい」
「引きこもりたい俺に、早々にこれを寄こしてくる」
「………」
「これは嫌がらせか?」
ユキは深く息を吐きながら、眉間を指で挟んだ。
「紫藤……殺す……」
紫藤から譲られた、シトウの全権限。
それは、ユキにとって。
無数の挑戦状のようなものだった。


