「もし……シドとの関係がなくて、タカのこともなくて」
後悔も、傷も、何もなかったら。
「私、この街にいたかな?」
なんでか、泣きたくなった。
「俺、もしかしたら間違ってお前を地元に帰したかもね」
ユキの眉間にも、薄く皺が寄った。
「みんなとも、出会えてなかったかも」
「お前をAnBarで働かせることもなかったかも」
何もなければ。
こうしてユキに惹かれることだって、なかったのかもしれない。
……ユキさん。
私はユキに手を伸ばした。
足を一歩、大きく踏み出した。
……つもりだった。
「──わっ」
長い間立ち尽くしていたクロッグサンダルの裏には、雪がすっかり固くくっついていた。
身体だけが前へつんのめって。
格好悪く、雪の上に突っ伏した。


