私はしばらくの間、誰もいなくなった路地から目が離せなかった。
胸元を掴み続けていた手。
すっかりかじかんだその手を、ゆっくりと放す。
「………」
後ろを振り返った。
「………」
ユキは、黙って私を見つめていた。
三年前。
私はここで、タカと別れることを選んだ。
シドに拾ってもらって。
ユキに預けられて。
AnBarで働くようになって。
いろいろなことがあった。
この街で、この場所で。
生き直すことを選んだ。
嬉しいことも、悲しいことも、たくさんあったけれど。
どんなことがあっても、私には帰る場所があった。
「ユキ、さん」
温かい居場所が、あった。
「俺って」
「………」
「冷たかった?」
首を傾げた。
「出会った頃」
「……はい」


