カナコが振り返る。
「……っ、シド!!」
紫藤はもう、振り返らない。
その大きな背中に、カナコは叫んだ。
「助けてくれて……っありがとう!!」
紫藤はその声に、口端を上げる。
「………」
……馬鹿言うな。
助けられたのは、俺の方だ。
それは、言葉にはしなかった。
顔を上げれば、交差点を渡り切った先に。
「怜」
「紫藤」
多夜と、アオイが待っていた。
慌てて出てきたのか、ジャケットの下は寝巻のまま。
白い息を吐きながら、寒そうに立っている。
二人は声を揃えて言った。
「「帰ろうか」」
ほんと、馬鹿ばっかだな……。
「──……ああ」
紫藤 怜は、笑った。


