「……帰りてぇのか」
尋ねた紫藤に、カナコは口を開かなかった。
カナコは眉間に力をこめ、唇を軽く噛んだまま。
何も言葉にはしない。
その顔を見て。
ふと、あの日の姿が重なった。
泣いているようなのに、泣いてない。
喋りたそうなのに、喋れない。
まるで、この交差点で出会った日のようだ。
雪の上。
血だらけで、ボロボロ。
俺が『生きてるか』と、尋ねれば。
お前はふざけたことを言ってきた。
──『……ぁ、あなたは私を助けられますか?』
傷だらけのお前が、ひどくカエデとかぶった。
過去の罪から、『お前はやり直せるか?』と。
そう尋ねられた気がした。


