カナコは困ったような顔をしながら。
くしゃりと、紫藤に笑いかけた。
「大丈夫。まだ、離れないから」
紫藤は息を呑んだ。
『まだ』
その言葉は、紫藤の胸に鋭く突き刺さった。
「………」
コイツはいつか、俺の元から離れる。
そのいつかは。
自分が治ったとき。
──『何が欲しい?誕生日ぐらい、ちゃんとねだって来い』
コイツが欲しがった、俺の『元気』。
俺が元気になれば。
もう、俺の傍にいる理由はなくなる。
元気になった俺から離れて。
あの男の元に戻れる。
カナコが、本当に欲しいものは。
瑞生──……あの男。
紫藤はケーキの入ったレジ袋の持ち手を、拳の中で強く握りしめた。


