「もしかしたら偶然かもって思ってた」
「………」
「おかげで私、すぐに自分の電話番号を覚えられた」
「自分の番号なんざ、覚えておく必要ねぇだろ」
カナコは静かに首を横に振る。
「自分の番号を覚えてたことで、助かったことがあったの」
過去、Z地区に迷い込んだとき。
助けを求めてかけた、自分の番号。
あの一本の電話が、千景との出会いにまで繋がった。
「私、やっぱり……シドにはたくさん助けてもらってる。数えきれないくらい、たくさん」
「………」
「だから。今日の誕生日プレゼント、とっても嬉しい」
紫藤は、繋いだ手にわずかに力を込めた。
「シド、ありがとう」
「………」
誕生日に自分を捨てた男も。
ひどく傷つけた俺のことも。
コイツは恨むことなく。
ただ、受け取ったものを大切そうに抱えて。
『ありがとう』と笑う。
なんてかわいそうで、健気だと思った。
けれど、それ以上に。
──なんて愛しくて、たまらない。
もう二度と傷つけたくない。
苦しませたくない。
今度こそ、今度こそ。
俺が、コイツを幸せにしてやりたい──


